島根県松江市内の河川で市民グループ「まつえワニの会」(遠藤修一代表)が取り組む外来生物アカミミガメの駆除に島根県の漁業調整規則が壁となり、活動継続が見通せない。外来種駆除目的では、わなを仕掛ける許可が下りないからだ。今年は県の自然環境整備事業を請け負う形で、調査名目で許可を得たが今回限りの措置。「こつこつと続けなければ、すぐ増える」と危機感を募らせる。
アカミミガメは繁殖力が強く食欲旺盛で、在来の水生生物や水辺の花を食べる厄介者。多くは北米原産のミシシッピアカミミガメでミドリガメとも呼ばれる。ペットとして販売され、捨てられたり逃げたりした個体が松江市内では堀川や天神川、馬橋川などにいる。
堀川に近い普門院(松江市北田町)では庭のコケが産卵のため掘り起こされる被害が十数年続く。普門院の谷村由紀江さん(61)は「カメが掘った穴をほかの動物がさらに掘り起こす」と困り顔だ。 カメの天敵の名を冠すワニの会は、3月まで松江堀川遊覧船の船頭として実態を目の当たりにした遠藤代表(74)=松江市東津田町=ら有志が昨春、結成し6人で活動する。ホシザキグリーン財団(出雲市)が2015年から約4年間、調査に取り組み、計1230匹を捕獲したことに触発された。
財団の活動で減ったカメが再び増え「このままじゃ、いけん」と奮起。今年は5月末から1カ月ほどで既に561匹を捕獲した。
悩みの種は、わなを仕掛ける許可だ。県水産課によると、水産資源保護のため県漁業調整規則に基づく許可が必要。ところが、対象は教育・研究機関、NPO法人など公益性が高い団体。目的も試験研究などに限られ、外来種駆除のために許可した例はない。さらに、天神川全域や馬橋川の一部は漁業権があり、地元漁協の同意も必要となる。
ワニの会は昨年、県水産課からストップが掛かり、許可が必要と知った。今年は県自然環境課の後押しで県の事業を請け負う形にしてもらい10月末までの間、許可を得た。だが、この事業は本年度限り。自然環境課自然保護グループの松井亨グループリーダーは「事業が終了しても、支援は続ける」と説明。NPO法人など許可が得やすい組織に改めるよう助言する。 NPO法人になると、事務処理が煩雑で、有志の活動としては負担が大きくなる。遠藤代表は「10年、20年と続けなければ、松江の自然は戻らない」と力を込めるものの、来年以降の展望は開けていない。