北アメリカ大陸原産で、かつてはペットとしても飼われていたアライグマ。どう猛な性格から飼い主に捨てられたり、逃げ出したりして繁殖し、今ではほぼ全国の都道府県で確認されている。年間で捕獲された数は5万匹を超えた。空き家などに住み着き、農産物を荒らす外来生物の「厄介者」は、捕獲数をはるかにしのぐ勢いで広がっている。【井上和也】
環境省がまとめた直近の2016年度の統計によると、捕獲数で最も多かったのが北海道の1万4019匹。2番目が5676匹の埼玉で、5257匹の兵庫、4548匹の千葉と続く。九州・山口では9〜11番目の1574匹の佐賀、1384匹の長崎、1166匹の福岡と、北部九州の多さが目立つ。
佐賀では05年に初めてアライグマが発見され、以来、県内各地で徐々に増加。県が集計した最新の19年度の捕獲数は約2300匹と過去最多を記録した。3年前よりも約700匹以上も多くなっている。神埼市の県猟友会神埼支部の大澤達之支部長もこのところのアライグマの増え方に頭を抱えている。「農作物のある平野部で増えている。イノシシのわなに入って餌を食べているので、イノシシを捕るためにはアライグマも捕らないといけない。困ったもんです」と嘆く。
捕獲数が繁殖数に全く追いつけないのは、まずは外来生物のため天敵がいないこと。イノシシの被害が大きいことからアライグマによる被害対策まで予算が十分に組まれていないケースも多い。さらに、空き家の屋根裏に簡単に入り込むため、捕獲するにも個人の空き家だから勝手に足を踏み入れられないなど「やっかいなんです」と大澤さん。
アライグマの被害対策で研修会の講師として全国を回っている元埼玉県農業技術研究センター鳥獣害防除担当部長で、現在、野生生物研究所「ネイチャーステーション」(埼玉県狭山市)の古谷益朗代表は「今のままでは広がる一方。認識が薄く、遅すぎる所がいっぱいある」と指摘。策を打っても雄は数十キロ移動するため、対策が後手に回る所が多く、「被害が減ったからといって個体が減ったわけではなく、横に広がっている。隣接する行政で連携してやる必要がある」と強調する。
そんな中でも古谷代表が「危機管理がうまくいっている」と話す宮崎県はこれまで捕獲したのは雄6匹。県は被害の拡大を水際で押さえ込むため年に1回講習会を開き、アライグマの痕跡調査も実施するなど「定着する前に手を打っている」と話す。
◇◆アライグマ捕獲数◆
都道府県 捕獲数 順位
北海道 14019 1
埼玉 5676 2
兵庫 5257 3
千葉 4548 4
和歌山 3472 5
佐賀 1574 9
長崎 1384 10
福岡 1166 11
大分 582 17
山口 71 28
熊本 4 36
宮崎 1 36
鹿児島 0 39
(2016年度、環境省調べ)
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