釣り人に親しまれる職人技、次代へ 竹製へら竿全国屈指の生産地 和歌山・橋本

 国の伝統的工芸品に指定されている和歌山県橋本市の「紀州へら竿(ざお)」は、市の地場産業の一つだ。3種類の竹を組み合わせて作られ、手間をかけた職人技が釣り人に親しまれている。同市の紀州製竿(せいかん)組合によると、全国に約40人いる竹製へら竿の作り手のうち、9割が橋本市に住んでおり、全国屈指の生産地となっている。


 紀州へら竿は昭和初期、橋本市出身の2人が、へら竿の原型を作ったとされる大阪の椿井五郎に技術を学び、持ち帰ったのが始まりという。同組合の米田護組合長(61)によると、1955年ごろが竿作りの最盛期で、合併前の旧橋本市内だけで約150人の作り手がいたという。
 しかし、その後、ガラス繊維素材などの竿の台頭で、職人は減少の一途をたどっている。そのため同組合は、後継者の育成に力を入れる。市内の民家を借りて竿作りを学べる「匠工房」を運営。出身者から作り手として独立する人も出始めた。また、釣り大会を開き、紀州へら竿を展示してPRすることもしている。
 ◇東京都職員を辞して修業へ
 後継者の育成に奮闘する米田組合長の元にも、へら竿師を目指して修業する人がいる。2019年5月に入門した小林則康さん(52)だ。ヘラブナ釣りが趣味で、同居の両親が亡くなったことをきっかけに、「自分の好きなことをやっていきたい」と思い立ち、東京都職員の仕事を辞して門をたたいた。
 米田組合長は「橋本市民にもへら竿が市内で作られていることが知られていない。皆が試行錯誤して作り上げてきた技術を伝えていきたい」と話す。
 一方、橋本市は19年11月、ヘラブナ釣りをテーマにした「アジア・ヘラブナ・サミット2019」を初めて開催した。ヘラブナ釣りが知られている中国やタイなどを中心に、アジア全体を巻き込んで、発展に向けて考えようという狙いだ。市の担当者は「新型コロナウイルスの影響で、アウトドアの釣りが見直されている。チャンスと捉えてへら竿の魅力を発信していきたい」と話している。【藤原弘】
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