川面を埋め尽くす南米原産の「ホテイアオイ」駆除は越年… なぜ増えてしまったのか

 水槽に浮かべる水草としてもなじみの深い南米原産のホテイアオイが高松市の春日川で大量に繁茂し、およそ2キロにわたって川面を埋め尽くした。繁殖力の強い外来種で、河川を管理する香川県が10月から本格的な撤去作業を開始。ホテイアオイを回収し、焼却や堆肥化を進めている。当初は年内の処理完了を目指していたが、県高松土木事務所は「完了は1月の見通し」という。なぜ、こんなに増えてしまったのだろうか。


■繁茂2キロに及ぶ
 12月下旬、高松市川島東町の川島橋付近から春日川上流の方を眺めると、ホテイアオイが数百メートルにわたって水面を埋め尽くしていた。茎が数十センチに伸び、上の方の葉は枯れかけて茶色っぽい。所々に見られる水面では野鳥が羽を休めていた。
 川沿いを散歩していた近くの女性(77)は「みるみるうちに増え、川を覆ってしまった。例年はこんなことはなかった」と振り返る。夏場にはかれんな花が咲いたが、繁殖力が強いと聞き、環境に悪影響を及ぼさないか不安に感じるという。「駆除を進めているらしいが、この辺はまだみたい。心配ですね」
 県高松土木事務所によると、8月に春日川の河川パトロールをしていた職員が、大量に繁茂したホテイアオイを見つけた。距離は合計すると約2キロに及んだといい、同事務所河川砂防課長の古川哲男さんは「これほどの事態は初めて」と驚く。
■少雨、高温が影響か
 ホテイアオイは南米原産のミズアオイ科の植物で、夏に淡い紫色の花を咲かせる。温暖な場所を好み、繁殖力が強いという。観賞用や家畜の餌として国内に持ち込まれ、各地に広がった。国の「生態系被害防止外来種リスト」では、甚大な被害が予想され、対策の必要性が高い「重点対策外来種」に指定されている。
 県高松土木事務所によると、今回の大量繁殖の理由はいくつか考えられる。
 川には農業用のせきが複数ある。過去にもホテイアオイが確認されたことがあったが、例年はまとまった雨によってせきが自動で倒れ、水とともにホテイアオイは下流に流された。ところが今年は、雨が少なくせきが倒れなかったため、川にとどまったホテイアオイがせき周辺で増殖。「夏場の高温もあり成長した」と分析する。
■「厄介な外来種」
 県は10月から本格的に処理を進めている。委託業者が重機で川からホテイアオイを引き揚げ、取り除く。一部は乾燥させた後、ごみ処理施設で焼却。残りは、堆肥の原料として、別の施設に持ち込んでいる。
 これまでに半分強の範囲で作業を終え、1月末の完了を目指す。処理費は約1千万円にのぼる見込み。
 国立環境研究所(茨城県つくば市)生物・生態系環境研究センターの五箇(ごか)公一生態リスク評価・対策研究室長はホテイアオイの脅威を「繁殖力が強い厄介な外来種。1つでも根が残ると再生する」と指摘。春日川のように一面に広がると「水中に太陽光が届かなくなり、水生植物や藻類が死滅する。酸素濃度が低下し、水生動物もすみにくくなる」と警鐘を鳴らす。大量繁殖を防ぐには「常にモニタリングし、ホテイアオイが小さいうちに見つけて取り除く必要がある」と呼びかける。
 春日川にどのようにホテイアオイが持ち込まれたかは分からないが、県高松土木事務所は「外来種をむやみに川に捨てないで。責任を持って適切に処理してほしい」と訴えている。
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