「部室」に年間2千人が来場 高校生が運営する「ミニ水族館」の見どころ

 100種類以上の生物を約90の水槽で飼育し、多いときで1日数百人が来場する−。実はこれ、高校生が運営する「ミニ水族館」のことだ。香川県立多度津高校(同県多度津町)生物科学部が校内の水槽でさまざまな生物を飼育する「ミニ水族館」は、卵から育てたマダイなど学習の成果を披露するとともに、校外の人との接し方を学ぶ機会にもなっている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2カ月に1回の公開を中止していたが、8月0日に再開した。


 ■生徒が孵化させたマダイ
 大小さまざまな水槽が並ぶ同校生物科学部の部室。入り口の真正面にある水槽には4匹のマダイが悠々と泳いでいた。体長は数十センチ。「生徒が卵から育てたものです」と顧問の秋山大地さんが説明する。
 同校海洋生産科の栽培技術コースの生徒らは授業の一環としてマダイやクルマエビ、アワビなどの養殖に取り組む。元気に泳ぐマダイは生徒らの学びの結晶だ。
 環境について考えてもらおうという展示もある。
 日本の固有種のアブラボテ(コイ科)が群れる水槽の隣には、池などに放流されて在来種の魚を食い荒らし、生態系に影響を与えるオオクチバス(ブラックバス)の入った水槽がある。アブラボテが生息する県内の池で捕獲されたものだ。特定外来生物に指定されているため、国の許可を得て飼育している。
 別の水槽では、ドジョウやオイカワ、タモロコといった県内でみられる淡水魚を展示している。
 ■新型コロナで打撃
 生物科学部には1〜3年の二十数人が所属。熱帯魚やカメなど100種類以上の生物を、約90の水槽で飼育する。週4日の活動日には、担当する生物に餌を与え水槽を掃除する。
 3年前から、偶数月の第2日曜日にミニ水族館として部室を公開。親子連れや近所の住民らの人気を集める。顧問の岡田智宏さんによると、年間2千人以上が訪れた年もあった。
 ところが今年度は、新型コロナの感染拡大により4、6月の公開を中止した。休校中は、登校できない生徒の代わりに3人の顧問が生物の面倒を見たが「世話が追い付かない」事態が発生し、ナマズの仲間など一部の魚が死んだという。
 再開にあたっては、感染防止策を徹底。来場者にはマスク着用や手指のアルコール消毒、名前や連絡先の記入を求める。窓を開けて換気をした上で、一方通行の順路に沿って間隔を取って見学してもらう計画で、餌やり体験も中止する。
 ■久しぶりの公開楽しんで
 生物科学部の部員らは、今年度初めてとなる一般公開を心待ちにしている。
 カエルを担当する3年の櫃本(ひつもと)凌さん(18)は「世話をしているカエルを見て楽しんでもらえたら」。カエルの話題になると冗舌になる櫃本さん。与える餌の違いや、熱帯地域に生息し木の上で暮らすイエアメガエルについて、雌雄を喉の形で見分ける方法を教えてくれた。
 幼い頃、魚や水辺の生物を捕まえて遊ぶのが好きだった2年の北村光希さん(16)はカメの一種、スッポンモドキの飼育を担っている。「餌やりを続けるうちに、水槽の前に立つだけで近づいてくるようになった」と目を細める。
 一般公開では、校外の幅広い年代の人との接し方を学ぶ目的もあって生徒による来場者への解説を行っているが、今回は新型コロナの感染を防ぐため取りやめになるという。北村さんは「話ができないのは残念だが、再開はうれしい」と笑顔を見せた。
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