お魚たちはみんなド近眼! 遠くが見えない代わりに発達したすごい「目力」とは〈AERA〉

 先日、知り合いの経営者の方から「そろそろ会社をたたんで引退しようと思ってるんだけど…」との話を聞きました。


 彼は筆者と同じ年齢なので「まだ早いんとちゃう?」と言ったんですが、「最近は老眼が進んで経理の資料を見るのも辛くなってきたから、もう潮時やと思う」とのことでした。
 筆者は小学生の頃からのど近眼で、それが幸いしているのかはわかりませんが、まだ老眼にはなっていないのですが、最近はお子さんの視力低下が進んで、小学生でも約3割の子供たちが眼鏡やコンタクトレンズを必要としているようですね。
 ところで、皆さんは魚の視力について考えたことはありますか?
 釣りをされる方だったら、水中の魚から見えるから、海面に身を乗り出すなとか、魚に見えないようにハリスを細くした方が釣れるなどと言われたこともあると思います。
 我々人間は普段生活する際に必要な情報の90%を視覚から得ていると言われるほど視覚に頼った生物ですが、魚たちはそうではありません。魚の聴覚や嗅覚は我々とは比べものにならないレベルと言われていますが、視力については大したことはないようです。
 実は魚の視力は、人間の視力で言うと、0・1から良くても0・6くらいと言われていて、あまり目がいいわけではありません。
 一般的に、外洋を回遊しながら餌を追いかけて捕食するカジキやシイラなどで0・4から0・6くらい、沿岸部で目の前の餌や海底の餌を食べているカサゴやクロダイなどは0・1から0・2程度のようです。
 冬になると東京から100キロ以上先の富士山が見えるように、陸上だと晴れて空気が澄んだ状態だと非常に遠くまで見通しがきくのに対して、水中だとどんなに澄んだ水の中でも、せいぜい40メートル先まで見通せる程度のようですので、海中にいる魚にとっては1・5とか2・0といった視力は不要なんでしょうね。
 ちなみに、淡水の場合は海中より透明度が低いことが多いので、フィッシュイーターであるブラックバスやブルーギルの視力も0・1程度のようです。
 その代わりといってはなんですが、皆さんよくご存じの通り、魚の視野は非常に広く、前後に320度程度もあります。前を向いていても、本当の真後ろ以外は見えているんですね。
 さらに魚の目は上下方向も非常に広く見えているようですので、海面に映る釣り人の姿も海中からちゃんと見えているんだと思います。
 そしてそれが何かまでは判別できなくても、危険を感じて瞬時に身をかわしたり警戒したりすることで身を守っているんだと思います。
 昔から「見えている魚は釣れない」と言われていたのは、こういうことだったんですね。
 また、魚の目の大きさは視力には関係がないようです。実際、大きなクリッとした愛らしい目が人気のメバルの視力も0・1程度です。
 ただ目が大きいとより多くの光を取り込むことができるので、夜行性の魚や深海に住む魚は目の大きなものが多くなっています。
 例えば水深200メートルから600メートルとかなり深いところに生息している金目鯛の目もとても大きく、さらにその名前の通り、金色に輝く目をしています。
 実はこの金色の正体は、目の中にあるタペタム器官というもので、目に入ってきた光を反射させることで増幅してより明るくする役割をしています。その働きによって、ほぼ真っ暗な深海でもわずかな光を頼りに餌となるエビや小魚を見つけて捕食することができるんです。
 猫など夜行性の動物の目にも同じタペタム器官があります。夜暗いところで猫の目が光っているのは、タペタム器官にわずかな光が反射しているためなんです。
 魚たちの目は、視力以外の部分でそれぞれが生存するのに適したものになっているんですね。
 先程出てきた、金色に輝く目を持つ金目鯛ですが、大型のものになると1キロあたり1万円以上もする高級魚です。
 今週末からくら寿司では、金目鯛の炙りや軍艦などを食べられるフェアを開催しています。週末は脂の乗った金目鯛を存分に味わってみてはいかがでしょうか。
○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2019年11月から、執行役員 広報宣伝IR本部 本部長
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