「かわいそう カエルのためにやってきた」って何の動物? 外来動物川柳〈AERA〉

 たくらみ低学年(小学1・2年生)クラスが取り組んできた「外来生物」プロジェクトも佳境に入りました。


 子どもたちは最終成果物として、自分が一番気になる外来生物について調べてきたことを模造紙半分サイズのポスターにまとめていきます。
 ポスターはその大きさからついつい欲張ってあれこれ情報を詰め込みがちですが、それだとかえって分かりにくくなってしまいます。
 私は、まずはじめに、このポスターで一番伝えたいことを決め、それを五七五で表すという課題を提示しました。
「五七五を作んの、学校でやったことある!」
 2年生が意気揚々と答えます。その一方で、1年生の男の子2人は少し不安そうな面持ちでこちらを見上げます。
 過去の先輩たちも挑み乗り越えてきた課題であり、私もフォローするので全く心配はいりません。そのことを彼らに伝え、早速作業に取り掛かります。
「文さん、こんなのどうかな?」
 Tくんの原案はアメリカザリガニの増加が在来生物に影響を及ぼすという内容のものでした。
「この話って、別にアメリカザリガニに限らへんよね?君がこれまで調査してきたなかで、一番驚いたり、面白いと思ったことは何なん?」
「うーん、それはアメリカザリガニがウシガエルのエサとして日本にやってきたことかなあ」
「じゃあ、そのことを題材にしないと!」
 Sくんはミシシッピアカミミガメの食欲旺盛ぶりを紹介したいとのこと。
 ただ、彼の原案には意味が重複する表現が見られました。
「『よく食べる』と『食いしん坊』って結局同じことを言ってるんちゃうの?」
「……たしかに。これやと繰り返しになってるだけやわ」
「そうそう、伝えたいことを17文字で表さなあかんから、無駄な表現を削りや」
 チュウゴクオオサンショウウオを調査してきたYくんは伝えたいことがありすぎて困っていました。
「五七五を二つ作っちゃダメ?」
「作るのは構わないけど、ポスターに使うのはどれか1つやで。じゃないと、ポスターの内容がまとまらへんやろ?」
「そっか……」
 子どもたち一人ひとりとのやりとりを通じ、それぞれがポスターで伝えたいメッセージを磨いていきます。
 そんな中、自分の五七五を早めに完成させた子が困っている仲間を手助けする動きが自然と生まれてきました。春先には見られなかった共同作業に彼らの成長を感じます。
 非常にタイトなスケジュールではありましたが、何とかその日の授業時間内に全員の五七五が出来上がりました。
 頭をフル回転させて、本人たちも充実感でいっぱいの表情を浮かべていたのが印象的でした。
 たくらみキッズが作った五七五の一部をご紹介したいと思います。
・ミドリガメ ちいさいけれど くいしんぼ【ミシシッピアカミミガメ】
・かわいそう カエルのために やってきた【アメリカザリガニ】
・なつにがて ウーパールーパー がい(害)はなし【ウーパールーパー】
 翌週の授業は時間いっぱいポスター制作にあてることに。各自家で集めてきたイラストや写真もたくさんあるようで、たくらみキッズのやる気が十分に伝わってきます。
 とは言え、その勢いのままいきなり模造紙に書き始めては、失敗したときの修正が大変です。
 そもそも模造紙を縦に使うか?横に使うか? 一番伝えたいメッセージ(五七五)をどこに配置するか? 生き物の絵や写真をどのように見せ、それらの補足説明をどう表すか?
 まずA3サイズの紙に簡単な設計図を書き、レイアウトのイメージを固めます。それが終わると、いよいよ制作作業に取り掛かります。
 躊躇なく大胆な構図で迫る子がいるかと思えば、緻密にバランスを考えてデザインする子がいたり。
 実際のスナップ写真をふんだんに使う子がいるかと思えば、手描きイラストにこだわる子がいたり。
 模造紙の限られたスペースのなかにそれぞれの個性が浮かび上がってきます。
 途中、慣れないポスターづくりに少してこずる場面もありましたが、子どもたちは集中力を発揮し、怒涛の巻き上げを見せてくれました。
「ふう、やっとできた……」
 何かを作り上げたという経験は今後の彼らにとって大きな糧になることでしょう。プロジェクト発表会で保護者の方にポスターを見てもらうのが楽しみですね!
※AERAオンライン限定記事
○山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。
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