カワウ最大営巣地が琵琶湖の島から川に 駆除で進む分散化、被害に広がりも、滋賀県

 滋賀県内に生息するカワウの分散化が顕著になっている。関西広域連合が昨年5月に実施した調査で、生息数が最も多かったのは野洲川(栗東市)だった。長らく県内最大の営巣地だった竹生島(長浜市)はピーク時の1割以下となり、愛知川(愛荘町)に続く3位にとどまった。生息数全体がピーク時の2割にまで減る中、河川への移動が進む。専門家は「優先的に守るべき場所はどこで、許容できる場所はどこか。カワウとの共存の形を考える段階に入った」と指摘する。


 カワウはアユ、フナなどを大量に食べ、ふんで樹木を枯らすなどの被害をもたらす。県内に今春飛来したカワウは2年ぶりに増えて7462羽だった。ここ5年は7千羽前後で推移し、最も多かった2008年(3万7865羽)の2割程度に落ち着いている。
 生息地別では、野洲川が1737羽(前年比50%増)で初めて県内最多となり、愛知川が1425羽(26%増)で続いた。6年連続で最多だった竹生島は1372羽で、前年より745羽(35%減)減った。この他、大津市小野の山林(887羽)や高島市の安曇川(862羽)など計9カ所で確認された。
 県は09年以降、目立った漁業被害がなかった1990年代半ばの「4千羽程度」を目標に、銃器による駆除を本格化させた。
 かつては琵琶湖に近い竹生島と伊崎半島(近江八幡市)に集中していたが、駆除の効果で生息数は大きく減少。内陸部の川や池に分散し、18年には2番目に少ない6607羽が最多13カ所で確認された。
 中でも野洲川は17年に初めて確認され、一気に増加。愛知川も15年以降定着している。一方、08年に約2万9千羽が生息し、県内全体の約8割を占めた竹生島は年々減少し、今春は当時の4%まで激減した。07年に1万羽を超えた伊崎半島もわずか46羽だった。
 県によると、安曇川や愛知川では、周辺集落でのふん害や河川の漁業被害などの影響が出始めている。人家に近いため銃器を使った駆除は難しく、県担当者は「分散はやむを得ないが、生息域が広がり管理しにくくなっている」と話す。住民らが川面に防鳥糸を張ったり花火を打ち上げたりして追い払い、被害の抑制に努めているという。
 カワウの調査や駆除を手掛け、関西広域連合や滋賀県の管理計画の検討委員を務める須藤明子氏は「とにかく総量を減らそうと駆除してきたが、今後はどこで受け入れるかを考えなければいけない。移動した場所に応じていろいろな手法を組み合わせ、生活に影響が出ないよう管理することが大切だ」と話している。
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