特定外来生物のアライグマが十勝管内で急増し、農業被害が深刻化している。農家らは箱わなを設置し捕獲を進めているものの、旺盛な繁殖ペースに追いついていないのが実情だ。駆除を担う猟友会の高齢化と人手不足も追い打ちをかけ、関係者は危機感を募らせている。専門家は被害拡大を防ぐため、早期の捕獲・駆除の重要性を訴える。
芽室町の果樹農家、松下忠雄さん(77)は6月中旬、水路近くに仕掛けた箱わなで今年5匹目となるアライグマを捕獲した。「手を洗いに水路に来たのではないか」と推測する。
松下さんの果樹園ではリンゴ、ナシ、ハスカップなどを栽培しているが、特に被害が大きいのは背丈が低く甘みの強いブドウだ。細長い手で器用に実をすくい取っていくという。
5年ほど前から園の入り口や水路付近などアライグマが出没しそうな場所に箱わなを設置する。好物の甘いスナック菓子やドーナツを餌にしていたが、餌だけを持ち去られることもあり、最近では餌を入れたペットボトルをわなの奥につるし、簡単に取られないように工夫する。だが、箱わなに気づき逃げた跡を発見することも少なくない。「生きるために必死なのだろうが、こちらも対応が大変だ」と松下さんは表情を曇らせる。
被害は果実だけではない。牛の飼料用サイレージに混ざるトウモロコシの実も好物で、覆っているビニールを破いて実だけを食べる。被害に遭った本別町の酪農家、方川一郎さん(76)は「ビニールを破かれると、サイレージが腐ってダメになってしまう」と頭を抱える。
アライグマは1970年代にペットとして輸入された後、野生化し道内各地に生息域を拡大した。2023年度の十勝管内の捕獲数は2411匹に上り、5年前と比較し6.2倍と急増。農業被害額は1381万円と5年前の7.9倍に達した。果菜類や果樹などが狙われ、芽室町や清水町で被害が大きく、幕別町や本別町、大樹町などでも増加傾向にある。
捕獲数の増加は、駆除を行う猟友会の負担増に直結している。本別猟友会の山口春夫さん(74)は「駆除しても駆除してもきりがない」と嘆く。会員の高齢化と減少が進む中、少ない人数で対応せざるを得ず、多い日には1人で3カ所以上回ることもあるという。「このまま要請が増え続ければ、対応しきれなくなる可能性もある」と危惧する。
山口さんは、農家らが迅速に駆除できる対策の必要性を訴える。勧めるのは、長さ約1メートルのパイプ先端をアライグマに当てて電流を流し気絶させる「電気止め刺し」の使用だ。「自分の畑は自分で守り、自力で駆除できるようになってほしい」と呼びかける。
