侵略的外来種による経済的損失、世界で年間約5兆円

【AFP=時事】世界中の侵略的外来種による直接的な経済的損失は、過去数十年にわたり、年間約350億ドル(約5兆円)に達しているとする研究結果が26日、学術誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション」に発表された。

 研究によると1960年以降、新たな地域に進出する外来種の動植物による被害は、社会全体に総額2.2兆ドル(約313兆円)以上の損失をもたらしてきた。

 蚊からイノシシ、根絶が難しい植物に至るまで、侵入生物の急速な拡散は農業を荒廃させ、疾病を広め、種の絶滅ペースを加速させている。

 過去の研究よりも正確な実態を把握するため、チェコ・南ボヘミア大学のイスマエル・ソト氏率いる国際研究チームは、少なくとも複数の国で被害額がしっかり記録されている侵略的外来種162種に関するデータを収集。次にバングラデシュやコスタリカなど、これまでデータがなかった78か国の経済的影響をモデル化した。

「侵略的外来種による被害の過小評価は予想していたが、その規模には驚かされた」とソト氏はAFPに語った。

 侵略的外来種の影響が最も大きいのは欧州で、次いで北米、アジアと続く。

 ソト氏によると「植物は被害と管理の両面で経済的に最も損失が大きいグループ」で、被害の集中地域として「欧州、中国東部、米国などの都市沿岸部」が挙げられる。

 例えば、イタドリ(ジャパニーズ・ノットウィード)は欧州で問題視されている外来種で、費用のかかる根絶プログラムが必要とされる。

 動物も甚大な被害をもたらしている。例えば、イノシシは作物やトウモロコシ畑、ブドウ畑を荒らす。地球温暖化により生息範囲が拡大した蚊は、デング熱やマラリアといった伝染病を媒介し、人間の健康に直接的な被害を与えている。

 ソト氏は「われわれの研究はわずか162種に基づくもの」であり、「実際の経済的損失はさらに大きい可能性がある」と述べた。

 国連(UN)の専門家組織「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」は、失われた収入など間接的な損失を含めた広義の定義を採用し、侵略的外来種が社会に与える被害総額を年間約4000億ドル(約57兆円)と推計している。【翻訳編集】 AFPBB News

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