山陰の小京都・津和野のコイ激減 500匹以上いたのが10年で半数以下…「鯉の町」復活へ、クラファン開始 高校生も返礼品制作「コイの姿残したい」

 山陰の小京都として知られる島根県津和野町で、殿町通りの掘割のコイが減っている。コイヘルペスや動物による捕食などが原因で、10年前に比べて半数以下の約200匹になった。「鯉(こい)の町」らしい景観を守ろうと、官民が連携して対策に乗り出した。

 2004年以降、全国各地でコイヘルペス(KHV)が発生し、掘割でもへい死が増加。13年の豪雨災害で川に流れたほか、サギやイタチなどの動物による被害も続いている。町は毎年20~30匹の幼魚を放流するものの、500匹以上いた10年ごろに比べて現在は約200匹まで減った。

 観光に影響を及ぼす課題の解決に動いたのは、同町出身の澄川恭子さん(54)。コンテンツマーケティングなどを手がける東京都内の企業に勤め、町のふるさと納税事業を支援する中、減少を知り、町にプロジェクトの立ち上げを提案した。

 ふるさと納税型のクラウドファンディング(CF)で集まった寄付を活用し、鉄柵を設置。既存のコイと、検査した上で数回にわたって200匹放流するコイを分けてコイヘルペスの感染を防ぐ。

 返礼品は津和野高校生有志5人や地元事業者が協力。生徒が描いたコイのデジタルアートを寄付者が色や模様を選んで地元産品の特別ラベルにするほか、高校生目線の観光マップを贈る。35万円以上の寄付者が対象のコイの命名権や観光施設の入館無料などのセットが目玉だ。

 しまね留学で山口市から入学した同校2年の寺本俊介さん(17)は「初めて津和野に来たときに印象に残ったのが殿町通り。コイといえば津和野と全国に知られるようになればうれしい」と話した。澄川さんも「白い壁や優雅に泳ぐ津和野の風景が当たり前ではないと気付いた。課題を知ってもらい、コイの姿を残していきたい」と意気込む。

 CFは2月末まで募集し、目標額は800万円。集まった寄付に応じて事業を進め、来年度以降も継続する予定にしている。

 掘割のコイは、1934(昭和9)年に商家の旦那衆「花草会」が放したのがきっかけで、1970年代に若い女性やカップルに人気を集めた。約200メートルの堀の中で増えたコイは大きく育ち、現在も写真撮影や餌やりを楽しむ観光客の姿が定着している。

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