ウシガエルで溢れた池 1年後に再び池の水を抜いたら…「興味深い」「頑張ってください」「お疲れ様でした」

 私たちの生活は、生態系の豊かな恵みに支えられており、そのバランスを保つことは重要です。そのために、さまざまな生物が共存できる自然環境を守り、未来に引き継ぐための取り組みを行っている人たちがいるのをご存知でしょうか。

 @ariake538さんは、YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」で生物多様性を保全する活動について発信しています。投稿された動画には「興味深い」「頑張ってください」「お疲れ様でした」などのコメントが寄せられ、多くの人たちからの関心を集めています。

 今回は、ウシガエルで溢れていた池の水を抜く活動に関する投稿について、@ariake538さんに話を聞きました。

なぜウシガエルの駆除を?

 ウシガエル駆除の背景には、その繁殖が池の生態系に与える深刻な影響がありました。

 ウシガエルは肉食性が強く、エビやサワガニ、魚、水生昆虫、トンボなどを捕食します。さらに、周辺のセミの幼虫やほかのカエルなども胃内容物から確認され、捕食圧が非常に強い生き物です。

 また、幼生(オタマジャクシ)は、その数が凄まじいため、オタマジャクシが食べる水草や有機物の量は膨大で、ほかの生き物の餌資源を奪うこととなります。そのため、最終的にはウシガエルばかりの池になってしまうのです。

 山を越えて何kmも自力で拡散するため、この池にいることよりも、近くの希少な生き物がいる保全地に侵入してしまうことも大きな問題です。

ウシガエルの駆除

 初年度の駆除には、10人弱くらいの人が参加しました。日程の都合で、実施日に動ける人が集まって行うパターンが多く、今年は4人で行いました。

 池の水位を下げるには1週間ほどかかりますが、最後の駆除作業自体は半日程度で終わります。駆除というよりは、池干しの作業に時間がかかるのだとか。大変なことはあまりないそうですが、日当たりが悪いので寒いことも。今年は直前の雨で水位が回復し、日程がくるってしまったのも大変でした。

 池干しは、水底の泥を除去するための重要な維持管理作業で、ウシガエルの駆除はあくまでも副次的なもの。

 水を抜かなければ池の底に泥が溜まって樋管が詰まったり、貯められる水の量が減ったりしてしまいます。そのため、農業用ため池の維持管理には、水は抜いた方がいいと言います。

 ただし、水抜きの際にはそのままウシガエルを下流に流すわけにはいかないため、回収します。

 1年前の駆除で回収されたウシガエルは、プラ舟1杯分くらい、今年は総計でもその半分くらいなのだそう。ウシガエルの駆除以外の要素も関係していますが、池ではヒシ群落(※)の拡大が確認されました。またミズカマキリや小鮒もかなり確認できたため、ウシガエルのオタマジャクシが減ったことで空いた生態的な隙間をフナが埋めているようです。

※ヒシ群落:水深2m以下の浅水中に群生する浮葉性の一年草である

 ウシガエルは成体になるまで時間がかかる生き物です。また、オタマジャクシで2年も過ごすため、安定した水辺が必要となります。

 伝統的なため池の管理方法である池干しを継続すると、ウシガエルのオタマジャクシはすべて干されたり、池から流されたりして生き残ることができません。言い換えれば、池干しなどの維持管理が盛んな地域では安定した環境を好むウシガエルは増えにくいということでもあります。

 これはオオクチバスなどのほかの外来生物にもいえることで、伝統的な管理を続けることが外来種の抑止にもなり、生物多様性の保全にも繋がります。

 農村インフラの維持管理は、そういった側面で生物多様性保全とリンクしているのです。@ariake538さんは「生態系を守るために池干しをするというよりは、農業用ため池を維持するための池干しに生物多様性保全の要素を加えたり、保全に関心のある私らのような人間が関わっていくことで、人手不足で管理がされなくなってしまっている場所の管理を再開したりしていくべきだと思います」と話していました。

活動を通して伝えたいこと

 農業者と生物愛好家などが連携しなければ、保全活動の多くは成り立ちません。

 管理者側は稲刈りなどと重なる時期は、池干しをできるほど暇はありません。そのため、@ariake538さんたちが草刈りや作業の代替をすれば「池干しができてウシガエルの拡散も止められ、隣の谷は希少種が出る」ことになります。この池を含む一連の活動が評価され、地元の団体が表彰されたとのこと。

「私らはその一部をお手伝いさせていただいたに過ぎません。しかしながら、我々の活動が地域にとってのメリットになるというのはいいことだと思います」と@ariake538さん。

「それぞれの目的のために対立するのではなくて、協力していくことが大切だと思います。分断が広がる昨今ですが、私のチャンネルでは連帯を目指した活動とその結果というものを発信して、これからの保全の一助としたいと考えています」と話していました。

 @ariake538さんたちが行っている活動は、決して簡単なものではありません。このような方たちがいることで、私たちの暮らしが守られていることに感謝したいですね。

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