人工的に品種改良で生まれた観賞用の「改良メダカ」が、琵琶湖の南湖と大津市内の池で昨年と今年に確認された。滋賀県内と琵琶湖・淀川水域の野外水域で標本化されて学術的に確認されたのは初めて。県立琵琶湖博物館や龍谷大生物多様性科学研究センターなどの研究グループが8月に発表した。人為的に遺棄された可能性が高く、研究者は「在来種と交雑してしまい、生態系への大きな脅威となる」と、放流の危険性を指摘している。
メダカの改良品種は江戸時代には既に存在しており、近年では観賞魚のブームに伴って次々と多彩で新しい品種が生み出されている。一方、研究グループによると、全国的に野外水域でさまざまな品種の改良メダカの発見が報告されている。改良品種は海外や国内の別地域から持ち込まれる外来種に次ぐ、「第3の外来種」と呼ばれて問題視されている。
県内では昨年7月30日に大津市田上里町の池で3匹の「青メダカ」が、2024年4月29日には大津市下阪本の琵琶湖で1匹の「青体外光メダカ」が採集された。龍谷大の学生などが発見した。
研究グループが体の色やうろこ、体型などを観察するなどして、改良メダカと判断した。これまでも県内では、企業や市民団体が環境調査などで改良メダカの疑いがある個体を見つけた例はあるが、標本に基づいて初めて断定された。
青メダカが見つかった池は、河川とつながっていない小さな池だった。さらに3匹のうち1匹は脊椎骨が曲がった奇形とみられ、研究グループは何者かが放流したとみている。
野生のメダカはかつて小川や田んぼに多く生息していた。しかし、農地整備で水路がコンクリートになって生育環境が変化したり、ブラックバスなどの外来魚に捕食されたりした結果、減少傾向にある。絶滅の危険が増大しているとして環境省のレッドリストで「絶滅危惧2類」に指定されている。
国内の野生種はミナミメダカとキタノメダカの2種があり、県内ではミナミメダカが在来種となっている。
県立琵琶湖博物館の川瀬成吾学芸員は「それぞれの地域に住むメダカは、長い年月を積み重ねてその環境に適応した遺伝子を持っている」と解説する。その上で、「人工的に生み出されたメダカはあくまで飼育用なので、環境への適応力は弱い。自然に放たれて野生のメダカと交雑することで適応力を持つ在来種がどんどんいなくなり、絶滅のリスクが高くなる」と危惧する。
メダカの放流には法的な規制はない。龍谷大生物多様性科学研究センターの伊藤玄客員研究員は「観賞魚メダカの飼育と品種改良は、日本の大切な文化の一つだ。しかし、雨で流出してしまったり、飼いきれなくなったからといって放流すると取り返しがつかなくなる」と話す。飼育文化と野生のメダカのどちらも守るために「絶対に放流はしないでほしい」と訴えている。