鹿児島県徳之島で問題となっている特定外来生物「シロアゴガエル」の防除作業に子どもたちが協力する「シロアゴガエル・バスターズ」が同島でスタートした。繁殖が盛んな期間の土日祝日、夏休み期間などを利用してシロアゴガエルの卵を回収する。世界自然遺産の島で始まった新たな取り組みに関係者は期待を持って見守っている。
シロアゴガエルは東南アジア原産で体長は5~7センチ。背面が茶褐色や黄みがかった色で脚が長く細長い体つきが特徴。4~10月に直径5~8センチの卵塊(泡巣)を水場近くに産む。人畜に害はないものの餌や生息地の競合などで在来生物を脅かす恐れがあり、日本の侵略的外来種ワースト100に指定されている。
徳之島で最初にシロアゴガエルが確認されたのは昨年5月。その後、環境省、島内3町、環境保護団体「徳之島虹の会」などが調査と駆除に乗り出した。同省徳之島管理官事務所によると、成体と卵が確認されたのは徳之島町と伊仙町の35地点。2023年中に成体5010体を駆除した。
シロアゴガエル・バスターズは、地域の子どもたちが主体的に防除に参加し生物多様性の保全の大切さを学ぶことが目的。徳之島虹の会が九電みらい財団の「環境分野の次世代育成支援活動助成事業」の助成金を活用して実施している。
バスターズの活動初日となった5月18日、徳之島町の諸田公民館で奄美海洋生物研究会(奄美市)の木元侑菜さん(33)を講師に招いたワークショップが開かれた。島内の小中学生と保護者ら約30人が参加した。
ワークショップでは徳之島に生息する生き物やシロアゴガエルについて学んだほか、実際にシロアゴガエルの繁殖が確認された沈砂池を見学した。シロアゴガエルの成体や卵は見つからなかったが、在来のヌマガエルや複数種類のトンボなど数多くの生き物を確認。もともと生き物に興味がある子どもたちは目を輝かせながら観察を楽しんでいた。
バスターズの活動は9月末ごろまで。その後、活動記録をまとめ、発表する予定となっている。バスターズメンバーとなっている児童は「夏休みの自由研究に役立てたいと思って参加した。世界自然遺産を守るために頑張る」と力を込め、「活動を通していろいろな生き物に出合うのが楽しみ。一番会いたいのはオビトカゲモドキ」と笑顔を見せた。
安全上の問題などから、子どもたちは成体を捕獲、駆除する夜間の活動に参加しない。ただ卵とはいえ命を奪う行為に疑問を持つ子どもも。ワークショップでは「捕まえて飼ってあげることはできないの?」「原産地に帰してあげられないかな?」などの質問も上がっていた。
木元さんはバスターズの活動について「子どもたちが防除に協力してくれること自体ありがたいことだが、一番期待したいのは活動を通して徳之島の豊かな生物多様性を学び、外来種問題を身近な問題としてとらえること」と説明し、「今後、徳之島の自然を守る一員になってくれたらうれしいですね」と子どもたちの活躍と成長に期待した。
シロアゴガエルがどうやって徳之島に侵入したかは判明していないため、奄美群島の他の島で既に侵入、繁殖が始まっていてもおかしくない状況。根絶に向けた徳之島での取り組みは他地域にとっての試金石になる可能性がある。