かれんな黄色い花…でも危険 特定外来生物オオキンケイギクに注意

 黄色く、かれんな花をつけるオオキンケイギク。道端でよく見られるキク科の植物だが、実は環境省の特定外来生物にも指定されている「厄介者」だ。その強い繁殖力で大量に繁茂して在来植物の生息場所を奪うとされ、相模原市では深刻な広がりを見せている。

 同市の市民ボランティア「自然環境観察員」が、2023年度の全体テーマとしてオオキンケイギクの分布調査に取り組んだ。その結果、市内のほぼ全域に分布していることが分かったという。

 同市の自然環境観察員制度は、市民の自然環境保護への関心を高めつつ、地域の自然保全のための基礎データを収集するのが目的。その観察員の1人で、オオキンケイギク調査の中心を担った日本自然保護協会の自然観察指導員の亀崎誠さん(73)は「分布の範囲は広く、深刻な状況」と指摘する。その上で、「絶滅危惧種のカワラノギクの生息域にも入り込んでおり、貴重な在来植物の生育に影響する恐れがある」と言う。

 調査は、市内を一辺1キロのマス目状に区切った「メッシュ」ごとに観察員を割り当て、各メッシュ内のオオキンケイギクの有無を確認する形をとった。開花期に合わせて昨年4月から7月まで実施し、65人が調査に参加。192カ所のメッシュのうち129カ所、518地点でオオキンケイギクを確認したという。

 オオキンケイギクは、日本には1880年代に観賞目的で渡ってきたとされる。道路工事ののり面緑化などに使われた結果、日本中に拡散したという。

 多年草で、株分けでも種子でも増えるため、草刈りをしてもすぐに再生する。亀崎さんの観察によると、茎が空洞で、風で倒伏しにくいため、30~70センチほどの花の高さも保たれ、受粉や種子の拡散にも有利な構造だという。

 調査で確認された場所は、道端が294地点で最も多かったが、次いで花壇や個人宅の敷地52地点で「栽培・保護されている」状態で見つかった。20年度に調査した、生態系被害防止外来種リストに記載されているアメリカオニアザミ(キク科)の分布状況と比較して、より山深い地域にも広がっているという。

 亀崎さんが特に懸念するのは相模川の河川敷だ。カワラノギクのほか、カワラハハコ、カワラサイコ、カワラナデシコ、カワラニガナなどの希少な在来種が生育しているが、オオキンケイギクはすでに侵入しており、「在来種の保護を考えると、駆除の必要がある」と話す。

 だが、見た目が美しく、毒性もないことから、警戒が必要な植物だと知らない人が多いのが実情だ。個人宅の敷地で栽培されている状態で見つかったのもそのためで、「有害な特定外来生物だと、市民に知ってもらうことが重要」と亀崎さんは警鐘を鳴らす。

 相模原に限らず影響は全国に及んでおり、環境省や各地の自治体が駆除の必要性をウェブサイトなどを通じて発信。相模原市の水みどり環境課も、市のホームページで「根や茎が残っていると、次の年にまた花を咲かせてしまうため、種ができる前(花が咲く前)に根から引き抜くことが重要」と具体的に説明。市道や市の施設敷地で見つかった場合は駆除しているという。(三木一哉)

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