松くい虫被害、近年急増 沖縄・恩納村で立ち枯れ深刻 防除対策しても歯止め効かず

 リュウキュウマツの松くい虫被害が県内で深刻化している。恩納岳や隣の石川岳では、広範囲にわたって松が赤くなって立ち枯れしている様子がはっきり分かる。恩納村は毎年、被害木を切り倒して焼却するなど防除対策しているが、歯止めがきかない状態だ。(北部報道部・下地広也)

 同村の調査によると、被害木は2020年度が537本、21年度1410本、22年度3202本と急増している。伐木本数は2年前から年間約600本。処理本数が多いため、山中の木は断念し、倒木の可能性がある村道沿いの木を優先して処理している。村内にある米軍キャンプ・ハンセン、自衛隊の恩納分屯基地内にも被害が広がるが、立ち入り制限区域内のため対処できないという。

 恩納村の長浜善巳村長は「特に村南部地域で枯れ木が目立ち、景観にも影響が出ている。村独自では、予算や労力の面から限界がある。県や国と連携し、防除策を継続していく」と話した。

 ■体長1ミリの線虫

 松くい虫の病原体は、体長1ミリほどのマツノザイセンチュウ。線虫自体は木から木へ移動できず、マツの皮を食べるカミキリムシに寄生して、他の木に移る。

 感染拡大を防ぐには、カミキリムシ駆除が鍵だ。被害木を焼却したり、細かく切り刻んだり、薬剤処理したりして、木の中に潜む成虫や幼虫を死滅させるしかない。県や市町村は半世紀にわたって取り組んでいるが、抜本的な解決には至っていない。

 県内で外来種のマツノザイセンチュウが発見されたのは1973年。東村平良、名護市久志地域の枯れ木からだった。県外から運ばれた建材に、線虫が紛れ込んでいたとみられる。

 松くい虫被害は80年、干ばつや台風の影響もあり、本島全域に拡大した。82年には約1万7千立方メートルに及んだ。

 薬剤をヘリコプターや地上から散布するなど防除対策を徹底した結果、いったんは沈静化。しかし90年代から被害が目立ち始める。2003年には本島北部を中心に約4万4千立方メートルにまで広がった。

 県森林管理課によると、近年は再び勢いが増している。21年は約2千立方メートル、22年には約4千立方メートルと倍増した。23年はさらに増える見通しだ。

 ■20年周期で拡大

 日本樹木医会県支部の生沢均支部長は「県内の松くい虫の大規模な被害は、およそ20年周期で起こっている」と指摘し、「降水量が少なく気温が高い年は、マツの生育に悪影響がある。木が衰弱している場合、線虫に感染しやすくなるのではないか」と推測する。

 カミキリムシを全て駆除するのは現実的には難しい。生沢さんは「カミキリムシの天敵のクロサワオオホソカタムシを活用した対策や、マツノザイセンチュウが侵入しても枯れないマツ(抵抗性マツ)の植樹が考えられる」と提案する。いずれの方法も即効性はないが「さまざまな方法を試しながら長期的に取り組んでいくしかない」と話す。

+Yahoo!ニュース-地域-沖縄タイムス