外来種アライグマとの闘い、根絶にはもはや手遅れ ベルギー

【AFP=時事】ベルギー南東部テンヌビル(Tenneville)近郊の森で働くティエリ・プチ(Thierry Petit)さんは、多数寄せられてくるアライグマに関する通報に対応するだけで精いっぱいだ。

 北米原産のアライグマは、欧州の在来種を脅かす侵略的外来種とされている。

 ベルギー当局は、南部の森にすみ着いた5万匹以上のアライグマを根絶するには手遅れだと認める。このため、個体数を管理し、在来植物の食害や病気の拡散を防ぐための対策が進められている。

 プチさんは「庭にアライグマがいたと通報を受けるだけではもはや出動できない。ナベコウ(コウノトリの一種)やショウドウツバメが脅かされている場所や、実際に環境の保全が可能な場所でのみ駆除している」と話した。

 ベルギーのアライグマはドイツとフランスから流入した。

 ドイツには狩猟・毛皮用としてナチス・ドイツ(Nazi)政権下の1930年代に米国から導入された。

 フランスではエーヌ(Aisne)県の米空軍基地に駐留する部隊が、ペットとして持ち込んだアライグマを野に放ち、1960年代には個体群が確立されていた。

 アライグマが在来種に与える影響を評価するチームに所属するビンシアン・ショッカート(Vinciane Schockert)氏は、「2005年ごろから、水路沿いの足跡や、車にひかれた死体が見られるようになり、個体数が増加していることが分かっていた」と話した。暖冬が続いたことが繁殖に有利に働いたという。

 アライグマはモリフクロウやムナジロカワガラスなどの卵を食べる。

 南部ワロン(Wallonia)当局はアライグマを侵略的外来生物と見なし、対策を講じ始めた。

 ワロン地域のセリーヌ・テリエ(Celine Tellier)環境相は「アライグマは見た目がかわいい野獣だ」と指摘する。「いまや域内全域に生息しており、共存する方法を学ばなくてはならない段階にある。しかし同時に、大きな問題になっている場所では個体数を減らし、爆発的な拡大を防ぐ方法も学ばなければならない」と語った。

 餌付けをしないこと、夜間に家に侵入させないよう工夫することを地元共同体には助言している。一方、殺処分については、緑の党に所属するテリエ氏は慎重な姿勢だ。「特定の個体を殺処分」しなければならない場合は、最も「倫理的な」方法を採用しなければならないと訴える。

 ワロン政府は現在、駆除の方法について動物愛護団体と協議している。

 ベルギー最大の狩猟団体の代表は、土地の所有者が自ら対処し始める前に、地元当局が大規模な駆除作戦を行うべきだと指摘した。

「爆発的増加と生息地の拡大を食い止めなければならない」 【翻訳編集】 AFPBB News

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