外来植物アレチウリが在来種を侵食 仙台・梅田川や七北田川でひたひた 駆除が急務

 仙台市を流れる梅田川や七北田川の下流で、特定外来生物アレチウリなどの外来植物が繁茂し、河川愛護団体から問題視する声が上がっている。繁殖力が旺盛で放置すれば拡大する恐れが強い。地元6団体は4月末、実態調査の結果を両河川を管理する宮城県に提出して駆除を求めたが、県の反応は鈍い。(報道部・岸菜々美)

 [アレチウリ]北米原産の一年草。つるが数メートル~数十メートル伸びて他の植物に絡み付き、大きな葉で日光を遮って枯らしてしまう。秋には1個体で数千~数万個の種を付ける。1952年に静岡県で確認され、2006年に特定外来生物に指定された。

■河川敷のサイクリングロード歩くと、足首にチクッ

 昨年10月、宮城野区の高砂地区梅田川環境美化推進協議会の実態調査に同行した。河川敷に整備されたサイクリングロードを少し歩いただけで、アレチウリの実のとげが足首に刺さり、チクチクと痛んだ。

 6団体が同月調べた結果、梅田川では梅田川橋(宮城野区小鶴)から七北田川との合流地点までの約3・1キロで、アレチウリやセイタカアワダチソウが群生。枯木橋(青葉区山手町)から下流の約5・9キロ区間でも確認したほか、七北田川では今市橋(宮城野区岩切)から河口まで約10・5キロで断続的に分布していた。

 仙台市河川愛護会によると、2010年ごろまでは毎年春、梅田川の土手一面に菜の花が咲いていた。池田友信会長(80)は「危機的状況だ。河川は地域の人々の癒やしの場所のはず。在来種が駆逐され、生態系が脅かされるのは悲しい」とため息をつく。

■地元団体が駆除要望も…県は鈍い反応「予算不足」

 抜本的な対策は種を付ける前の定期的な駆除だ。梅田川上流の一部では、北部地区梅田河川環境美化推進協議会が年2回、除草に取り組んでいる。

 ただ、会員の高齢化で先行きは見通せない。斎藤公男会長(72)は「河川敷の広い場所では、住民による除草だけでは手に負えない。行政で回数を増やしてほしい」と訴える。

 県仙台土木事務所は年1回、七北田川の七北田公園(泉区)に近い赤生津大橋から高砂橋(宮城野区蒲生)までと梅田川のほぼ全域を除草する。作業は6月から約4カ月を要し、事業費は約5600万円に上る。

 6団体は今年4月266日、外来種の繁茂状況を地図に示した調査結果を同事務所に提出し、市との連携も視野に対策強化を要望した。

 だが、担当者は「課題の深刻さは認識しているが、予算や人手の不足で草刈り回数を増やすのは厳しい。本当に優先度が高いのかどうかも含め検討したい」と慎重な姿勢を示した。

■農地にも侵入、宮城の大豆畑は約1割で確認

 アレチウリの脅威は農業にも広がっている。宮城県によると、県内では大きな河川を中心に分布域が拡大していて、鳴瀬川や迫川、阿武隈川の流域に加え、七北田川の一部でも農地に侵入している。県の昨年の調査では、県内の大豆畑約1万1000ヘクタールの約1割で、アレチウリが確認された。

 県古川農業試験場(大崎市)の滝沢浩幸作物栽培部長は「年々右肩上がりで増えている。河川敷や農道、用水路から転作の大豆畑に侵入するケースが多い。堆肥に用いる牛のふんから繁茂することもある」と明かす。

 駆除対策については「5~9月に時期をずらして増えるため、年1回の除草では効果がない。抜き取った後は枯れるまで放置し、焼却する必要がある」と説明し、長期戦で対策に臨む覚悟が求められると訴える。

■長野県は官民協働の「駆除大作戦」を展開

 長野県は「アレチウリ駆除大作戦」と名付けて長年、官民協働で対策に取り組む。2016年からは6月を「強化月間」と位置付け、早期に根こそぎ取り除く重要性を呼びかけている。

 毎年5~10月ごろ、長野県内各地の自治組織や河川愛護団体、市町村職員、企業などが除草活動を実施する。昨年は1万4367人が参加した。県は駆除費の補助金を交付していない。

 県は03年から年1回ペースで、住民や市町村職員らを対象に研修会を開催。外来生物法や駆除方法の知識を身に付けた指導者を養成している。

 県水大気環境課の担当者は「正直、量的にどの程度の効果が出たか不明だが、多くの県民が協力してくれたのは『大作戦』で周知した結果。以前からまん延状態と認識しており、減らすよりもこれ以上増やさないよう努めている」と話す。

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