食いしん坊の“厄介者”琵琶湖を脅かす「チャネルキャット」奈良には大量のカメ…特定外来生物に注意!

 強い繁殖力で元の生態系を破壊する「特定外来生物」が、近畿各地で新たな問題を引き起こしている。

 近畿の水がめ、琵琶湖では今、厄介な魚の繁殖に警戒を強めている。6月、取材班が向かったのは、彦根市の琵琶湖岸にある滋賀県水産試験場。職員が大きな網を使って厄介者の魚を見せてくれた。

(滋賀県水産試験場 石崎大介主査)
「これがチャネルキャットフィッシュです。胸びれと背びれに鋭いとげがありますので、素手で触ると危険かと思います。私も何回か刺されました」

 大きな口に、鋭いトゲを持つ魚、その名も「チャネルキャットフィッシュ」だ。大きいもので80センチほどに成長する北アメリカ原産の外来種のナマズだ。

 このチャネルキャットフィッシュ、琵琶湖の生態系を脅かしかねない危険な存在。というのも、あまりにも“食いしん坊”なのだ。

(滋賀県水産試験場 石崎大介主査)
「(チャネルの)お腹がパンパンに膨れ上がっていると思いますけれども、腹をハサミで切って出してみますと、このチャネルキャットフィッシュ1匹で30匹以上のワカサギを食べている。もしチャネルキャットフィッシュが琵琶湖で増加してしまうと、アユが食べられてしまって、漁師さんが捕るものが無くなってしまう」

 今はまだ、琵琶湖での生息数はさほど増えていないが、繁殖する恐れがあるのだ。

 琵琶湖から南の方へ流れ出る瀬田川。この川では15年ほど前からチャネルキャットフィッシュが確認され、ことし5月までに1400匹以上が捕獲されたという。

(滋賀県水産試験場 石崎大介主査)
「(茨城県の)霞ヶ浦なんかでは在来の魚がほとんど減ってしまって、ほとんどこのチャネルキャットフィッシュばかり捕れているという状況になっていますので、琵琶湖でもひょっとしたら同じような状況になるのではないかと考えています」

 琵琶湖では、ブラックバスやブルーギルが大繁殖して問題となった苦い記憶がある。滋賀県は琵琶湖で大繁殖する前に駆除する水際措置を進め、釣り上げた際には回収ボックスへと移すよう呼びかけている。

日本有数の観光地・奈良では「アカミミガメ」が大繁殖

 一方、日本有数の観光地の奈良。奈良市中心部の川に取材班が向かうと、大量のカメを見つけた。目の横あたりが赤い、アカミミガメだ。

(近所の人)
「そこらへんいっぱい。100匹じゃきかない。この川の上まで行ったら結構いるんじゃないか」

 アカミミガメは、1950年代後半から祭りの屋台の景品などで、通称「ミドリガメ」として輸入された。

 県内有数の観光地、奈良公園の猿沢池でも大繁殖していたことが。2014年の駆除作業の際には、大量のカメが池の中から見つかった。

 アカミミガメは、環境省によると屋外には800万匹、飼育者も多く、110万世帯に160万匹が生息しているという。

 身近に存在するアカミミガメだが、6月1日から「条件付特定外来生物」に指定され規制が始まった。

(奈良県 景観・自然環境課 街道亙さん)
「直接的に人に危害を加えるわけではないが、在来種でいるカメやほかの生物との共存関係が崩れてしまう。アカミミガメは繁殖力が強いので 今まで日本にいた古来種が少なくなってしまう」

 規制では、許可無く販売、購入、輸入等を行うこと、飼っていた個体を逃がすこと、元いた場所から別の場所に移動させることなどが禁止され、違反した場合、罰金や罰則の対象となる。国などはチラシを作り、飼育が困難になっても野外の池や川に放さないように注意を呼びかけている。

(奈良県 景観・自然環境課 街道亙さん)
「アカミミガメは30年くらい生きるので、自分のライフスタイルを考えて、自分が30年後に飼育できるかを考えて飼育するかしないかを判断して頂きたい」

 一方、生態系を守るためのこの規制により頭を悩ませている人たちもいる。

 毎年7月、県が指定する無形民俗文化財でもある伝統行事が行われる蓮の池。去年、行事に欠かせない蓮の生育不良が起きたのだ。問題が起きる前には、一面に蓮が咲いていたが…。

(奥田地区 西川隆教総代)
「紫色っぽい葉っぱが浮いてますけども、茎が食いちぎられて水面に浮いている状態です」

 原因の1つとみられるのが、アカミミガメだ。奥田捨篠池では対策として、先月、罠を設置したところ400匹のカメを捕獲したという。しかし、今月からの新たな規制でアカミミガメを捕獲した後、ほかの場所に放つことができなくなり、対処に頭を悩ませているのだ。

(奥田地区 松本一郎副総代)
「(ハスが)全滅になる可能性もあると思います。なんか対策は考えていかないといけない」

 私たちの身近に迫る特定外来生物。まずは知り、正しく付き合うことが求められている。

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