広島市佐伯区の八幡川で、国特別天然記念物のオオサンショウウオと中国原産の外来種の交雑が進んでいる。2022年5月に広島県内で初確認。その後の市の調査で捕獲した8割が交雑種で、専門家は「在来種は消滅の危機にある」と警鐘を鳴らす。交雑種を捕獲して隔離する施設の整備や、他の水系へ生息地を広げないための市民の協力が課題となっている。
「いた、いた!」。11月中旬、八幡川上流であった広島大(東広島市)や安佐動物公園(安佐北区)の調査。胴長姿の研究者や飼育員たち5人が、夜の川面をヘッドライトで照らしながら進むと、20分ほどで岩下に潜む2匹を捕まえた。
黒っぽく痩せておとなしい1匹は、以前の調査で埋め込んだマイクロチップから在来種と判明。一方、茶色っぽく、体格の良い活発な1匹は外来種チュウゴクオオサンショウウオとの交配で生まれた個体だった。いま、この交雑種が全国で相次いで確認されている。
八幡川では5月以降、市が捕獲した35匹のうち28匹が交雑種だった。中には体長1メートル超で推定年齢30歳以上の成体や、交雑種間で生まれた「第2世代」とみられる幼体も。調査に同行した日本オオサンショウウオの会の桑原一司前会長(73)=安佐北区=は「交雑種は成長が早く俊敏」と指摘。活発で強い交雑種の子孫が増えたとみて、「在来種は生存競争に負けていなくなる」と危惧する。
対策として、広島大などは自然界から交雑種を隔離する取り組みを進めてきた。ただ、安佐動物公園などの水槽ですでに20匹以上を保護しており、余力はない。11月の調査で捕まえた交雑種は放流せざるを得なかった。調査に参加する同大総合博物館の清水則雄准教授(46)=動物生態学=は「自然界でこれ以上増やさないため、新たな隔離施設が必要だ」と強調する。