東日本大震災の津波で生態系が激変した仙台湾の干潟は、周辺環境が戻れば10年程度で回復するレジリエンス(回復力)の高い生態系であると、東北大大学院生命科学研究科の占部城太郎教授(生態学)の研究チームが発表した。
■蒲生はヨシ原の壊滅で戻らず
占部教授は国立環境研究所や県内の高校教員らとチームを組み、延べ500人の市民ボランティアの協力を得て、蒲生干潟(仙台市宮城野区)、鳥の海(亘理町)、松川浦(相馬市)など仙台湾の干潟8カ所で、震災から10年間の生態系を調べた。
その結果、どの干潟も震災から数年後には、震災前に生息していた生物種が確認されるようになった。特に周辺環境が元に戻った干潟の生態系は、7~9年後には震災前と区別が付かない状態に戻ったという。
ただ、蒲生干潟だけは震災前に干潟の奥部に広がっていたヨシ原が津波で壊滅したままのため、震災前の姿には戻っていない。
津波で激変した沿岸の街並みに比べ、沿岸生態系のレジリエンスの高さが示された形だが、占部教授は蒲生干潟を例に「周辺環境が変化すれば、そこで暮らす生物に後戻りできない影響を及ぼす可能性がある」と指摘。「震災後に建設された巨大防潮堤などが、沿岸の生態系にどのような影響を及ぼすかが、今後の検討課題だ」と話した。