10年前から行方不明だった兵庫のオオサンショウウオ、まさかの滋賀で発見! 保護から帰郷までの一部始終

 2012年から行方が分からなくなっていたが、今年6月、滋賀県甲賀市で見つかった。健康状態は良好で血液検査などを経て8月、ふるさとの兵庫県三田市に戻ってきた。国の特別天然記念物、オオサンショウウオ。元々は羽束川に住んでいたが、違法に捕獲されて滋賀の川に放流されたとみられる。(土井秀人)

■発見例のない川で

 6月19日、甲賀市の野洲川で住民がオオサンショウウオを見つけた。過去に野洲川での発見例はなく、保護団体「滋賀のオオサンショウウオを守る会」が調べたところ、個体識別番号が記されたマイクロチップが埋められていた。

 水族実験施設のある長浜バイオ大学(滋賀県)で、守る会の会長でもある齊藤修教授らが保護。滋賀県内の個体が登録されているデータベースを調べたが、該当はなかった。

 他府県に照会したところ、兵庫県自然保護協会が07年に三田市の羽束川で登録した個体と分かった。最後に姿を確認したのは12年7月。当時の体長は68センチだったが、10年間で83・5センチに成長し、体重は4・4キロとなっていた。

 特別天然記念物のため同協会が文化庁に対応を相談すると、「健康状態などに問題がなければ、元いた生息地に戻すことが望ましい」との回答があった。獣医師による健康診断や血液検査でも問題がなかったため、今年8月4日、同協会のメンバーらが引き取って三田市の羽束川に放流した。同協会調査部長の大沼弘一さんは「地理的関係などから人間の手で移動させられた。観賞用に捕獲したが手に負えなくなったのか、目的は分からない」とする。

■後絶たない違法な持ち去り

 国の特別天然記念物は文化財保護法で守られており、捕獲や移動が禁止されている。だが、オオサンショウウオが違法に持ち去られたとみられるケースは後を絶たない。

 2014年、大阪府羽曳野市の住宅街で、路上を歩いているオオサンショウウオが保護された。この個体は12年に三田市の羽束川で登録されたものだった。17年には丹波篠山市で登録された個体が神戸市長田区の新湊川で見つかった。

 兵庫県自然保護協会調査部長の大沼弘一さんらが最も懸念しているのが、外来種と交配した「交雑種」が県内に持ち込まれることだ。外来種は約50年前、中国から食用として輸入されたものが野生化したとされる。ワシントン条約で1992年に取引が禁止されたが、各地で交雑が問題となっている。

 京都市文化財保護課によると、同市の鴨川ではかつて発見された個体の9割以上が交雑種だった。奈良や三重、岡山でも確認されており、広島では今年5月に初めて見つかった。専門家らは交雑が進み、日本固有種が消滅することに危機感を抱く。兵庫県内では見つかっていないが、大沼さんは「一度持ち込まれたらすぐに交雑してしまい、取り返しがつかなくなる。移動させることは絶対にやめてほしい」と力を込めた。

 【オオサンショウウオ】オオサンショウウオは日本固有種のほか、チュウゴクオオサンショウウオ、アメリカオオサンショウウオがいる。欧州の3千万年前の地層からほぼ同じ姿の化石が見つかっていることから、「生きた化石」と呼ばれる。日本固有種は西日本の中国山地などに生息。地方によって呼び名はさまざまで、ハンザキ、ハンザケ、アンコ、ハダカスなどがある。1952年、国の特別天然記念物に指定された。絶滅の恐れのある野生動物に対する「種の保存法」でも捕獲、譲渡、販売などが規制されている。

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