美しいけど…駆除対象 京都の山あいで特定外来生物が繁殖、頭抱える住民

 特定外来生物に指定されているキク科の「オオハンゴンソウ」が、京都市左京区花背地域に繁殖している。黄色のかれんな花を咲かせるが、地元にとっては生態系に悪影響を及ぼすやっかいもの。市民団体が昨年から駆除活動に乗り出したが繁殖力が非常に強く、「抜いても抜いても、いたちごっこ」と頭を悩ませている。

 山あいに流れる川沿いや休耕田で、一面に広がる黄色い花畑。「とても美しいでしょう。でも正直、対処しようがないぐらい、深刻な事態です」。NPO法人「自然観察指導員京都連絡会」(北区)の清水正代表(71)=伏見区=はため息をついた。

 オオハンゴンソウは、北米原産の多年草で、夏に直径6~10センチの花を咲かせる。明治時代に持ち込まれ、各地で野生化。2005年、国内固有の生態系に被害を与えるとして環境省が特定外来生物に指定した。

 同会によると、花背地域には十数年前に入り込んだとみられる。20年夏ごろの植生調査では、花背原地地区を中心に少なくとも10カ所以上で群生していたという。

 同会は昨春、定期的に駆除を開始。くわを使って掘り起こすが、根が強く、抜くのに大きな力がいるうえ、焼却処分するために土を丁寧に取り除かねばならず、非常に手間がかかるという。昨年7月には市民ボランティアを募り、約60人で一斉に駆除した。だが、わずかに残った根から次々と芽を出すため、清水代表は「生命力の強さが想像をはるかに超え、徒労感が大きい」と困惑する。

 なぜここまで広がったのか。雨で種子が川に流されるなどして、自然に広がっていった可能性が高いが、人為的な原因も否定できないという。花背自治振興会の前会長古原久弥さん(69)は「きれいな花なので、これまで誰も害があるという認識がなかった」と語る。別の住民によると、花の少ないお盆時期に咲くため、墓に供えたり、市民が摘んで持ち帰ったりしていたケースもあるという。

 群生地は私有地も多く、会による駆除が難しい。そのため、会では、オオハンゴンソウの生態や駆除の必要性を記したチラシを全戸配布し、集落に看板を立て、自主的に刈ってもらうよう呼び掛けている。

 ただ、集落は高齢化が進んでいるといい、古原さんは「広い田んぼや、険しい斜面の土手を刈るのは、正直厳しい」と打ち明ける。

 花背では、平安末期に創建された峰定寺の周辺などに希少な草花が多く育つ。現状、同寺周辺にオオハンゴンソウの群生は見られないが、清水代表は「もし種子が入って希少植物が駆逐されてしまうと、取り返しがつかない」と危機感をあらわにする。

 隣接の広河原地区や右京区京北町でも花を見かけたとの報告があり、生育域拡大の兆候もある。ただ、同会だけの活動ではマンパワー、資金の両面で限界があり、清水代表は「オオハンゴンソウの駆除には、さらに多くの人たちや行政の協力が不可欠。花背の豊かな植生を何とか守っていきたい」と話している。

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