増え続けるアライグマの駆除「住民主体で」 NPOと県、捕獲態勢の構築急ぐ

 熊本県内でも確認数が増えている特定外来生物のアライグマの駆除を促す活動が活発化してきた。環境問題などに取り組むNPO法人・くまもと未来ネット(熊本市)と県は、地元住民を巻き込んだ捕獲態勢の構築を目指している。

 県内では2010年、熊本市南区城南町で初めて発見された。年々、捕獲やカメラ撮影による確認数は増え続け、21年度は85件で19年度から倍増。22年度は県内全域の24市町村で22件(7月末現在)が確認されている。県内では農作物被害の報告はないが、福岡県では20年度に1639万円(前年度比20%増)に上っている。狂犬病やアライグマ回虫など感染症を媒介する恐れもある。

 アライグマの駆除を目的に、未来ネットは19年度から毎年、自治体の職員を対象にした「防除研修」を県から受託し、県内各地で実施。これまでに玉名や宇城、八代など計8カ所で開き、各回10~20人が受講している。研修では、自動撮影カメラや箱わなの設置、殺処分の方法などを説明。自治体職員だけでは作業人員が足りないため、カメラの映像確認や通報は地域の住民が主体となって取り組む必要性を強調している。

 各地で講演する未来ネットの歌岡宏信さん(67)=熊本市=は「カメラを持っている自治体はまだ少数。常に5~10台を確保し、住民から要望があればすぐに貸し出せる態勢を整備すべきだ」と強調。県自然保護課は「今後、県内全域に広がる恐れがある中、自治体と住民が協力した捕獲態勢が不可欠」と指摘する。

 未来ネットはアライグマの見分け方や捕獲の手順を記したリーフレット「被害対策マニュアル」を独自に千部制作し、出没地域の住民らに配布している。歌岡さんは「被害を防ぐための対策は待ったなし。自治体職員がリードしながら、地元住民が主体的に動いてアライグマを捕獲するシステムを早く構築しなければならない」と訴える。(樋口琢郎)

 アライグマ 北米原産で、タヌキやアナグマに似ているが、長いしっぽに5、6本の黒いしま模様があるのが特徴。夜行性であまり人目につかず、木登りや泳ぎも得意。日本にはペットとして輸入され、捨てられたり、逃げ出したりした個体が野生化したとみられる。

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