人工島に野生アライグマ どこから?住民も驚き 神戸・六甲アイランド

 神戸市東灘区の人工島、六甲アイランドで特定外来生物のアライグマが1頭見つかった。市によると島内での目撃例は珍しい。本土と人工島の「海峡」は最も短い所で約400メートル。海を泳いだのか、橋を渡ったのか-。

■つやつや

「顔をかいたりあくびをしたり、のんびりと休憩している様子に見えました」

 アライグマが見つかったのは6月11日午後1時半ごろ。六甲ライナーアイランドセンター駅近くにある「神戸動植物環境専門学校」の職員谷洋平さん(35)=明石市=が、専門学校の駐車場前で、高さ3メートルほどの柱の上にいるのに気付いた。

 記録しておこうとスマートフォンのカメラで撮影を始めると、間もなく隙間に隠れた。確認したのは1頭。「思いのほか毛並みはつやつやで、食べ物には困っていないんだなという印象」を持ったという。

■被害は深刻

 アライグマはもともと北米原産のほ乳類で、日本には1970年代にペットとして大量輸入された。気性が荒く、飼い主が飼育放棄した個体が野生化したとされる。

 神戸市によると、市内で野生のアライグマを初めて確認したのは98年。2002年ごろから生息域が広がり、頭数も増えている。

 西区や北区の農村地域では農業被害が続出し、東灘区など六甲山系の南側の市街地では屋根裏にすみ着いたり家庭菜園を荒らしたりする生活環境被害が目立つ。神戸市鳥獣相談ダイヤルに寄せられた被害相談は15年の333件から19年に663件と倍増。市は「防除実施計画」を策定し、捕獲を進めている。

■魚崎まで

 「分布は全市域だとみているが、人工島にいたというのはさすがに珍しい」とは、神戸市農政計画課の担当者。ボランティア団体「六甲アイランドを美しい街にする会」によると、10年以上暮らし、数年前に島内でイノシシを見つけたという住民も「アライグマは初めてじゃないか」と驚いているという。

 住民らによると、近年あったアライグマの目撃情報で最も六甲アイランドに近かったとみられるのが、島からおよそ2キロ、海を隔てて北側に位置する東灘区魚崎北町5付近の市街地。兵庫県警が配信する「ひょうご防犯ネット」で20年9月、アライグマの親子が見つかったという注意喚起のメールが届いたが、それより南下したとの情報はなかったという。

■直接聞いてみないと

 県森林動物研究センター(丹波市)の廣瀬泰徳・業務部副部長は「餌を探しに来たのかたまたま迷い込んだのかはアライグマに直接聞いてみないと分からない」とした上で、アライグマは泳ぐのが得意なため、今回のケースでは橋を渡る、海を泳ぐ、どちらの経路も考えられると説明。また、行動範囲は直径でおよそ4キロとそれほど広くない一方、ちょうど4、5月の出産期を過ぎて子どもが大きくなり、「広めに動き出す時期ではある」とする。

 廣瀬副部長は「ぱっと見るとかわいいかもしれないが、人に慣れてしまうと行動がエスカレートする。近づかない、餌付けしないを徹底して、見つけたら通報を」と注意を呼び掛けている。

■1月にも気配

 目撃者の谷さんは元水族館職員で、現在は授業の一環で島内の特定外来生物を調査することもある。

 今年1月には六甲アイランド南端、マリンパーク近くの野鳥園で、湿地帯にアライグマの足跡やふんのようなものを目にしたというが、そのときは「本当にいるのか?」と半信半疑だった。「環境を考える学生を育てる学校の職員として、この事実と向き合い、授業のフィールドとして島内の調査も続けていきたい」と話している。

 神戸市鳥獣相談ダイヤルTEL 078・333・4408

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