特定外来生物「アライグマ」2年で倍増 熊本県内、昨年度85件確認

 特定外来生物のアライグマが熊本県内各地で相次ぎ確認されている。2021年度の個体の確認数は85件に上り、2年前の19年度から倍増。このまま増加すれば、農作物や生態系に深刻な被害をもたらす恐れがある。

 アライグマは北米原産で、タヌキやアナグマに似ているが、長いしっぽに5、6本の黒いしま模様があるのが特徴。夜行性であまり人目につかず、木登りや泳ぎも得意だ。かわいらしい姿とは対照的にどう猛な性格で、日本にはペットとして輸入され、捨てられたり、逃げ出したりした個体が野生化したとみられる。

 05年に飼育や譲渡を規制した特定外来生物に指定されたが、雑食で環境適応能力と繁殖力が強く、全国的に生息域を拡大している。九州では既に沖縄を除く全県で確認。スイカやミカンなど農作物の食害のほか、狂犬病やアライグマ回虫など感染症を媒介する恐れも懸念される。

 県内では、2010年に熊本市南区城南町で初めて発見された。県自然保護課によると、年々、捕獲やカメラ撮影による確認数は増え続け、21年度は85件(うち捕獲は14匹)で19年度の42件(同9匹)から倍増。4月現在、熊本市や天草市、水俣市など県内全域の23市町村で確認されている。(写真:熊本日日新聞)

 主に山林や河川近くに生息するが、餌を求めて住宅地に出没する事例もある。現在、県内で農作物被害の報告はないが、全国では年々増加しており、20年度の被害総額は4億1400万円に上る。福岡県は19年度比20%増の1639万円だった。

 熊本市内では、植木町や河内町など山林部で多く確認されており、市は捕獲や生息状況を確認するカメラ設置など21年度予算に340万円を計上した。市環境共生課は「今後、農業被害が確認される恐れもあり、広がりを最小限に抑えることが重要」と指摘。「アライグマを見かけても、狂暴なので決して近付かないで。効果的に捕獲するために、可能であれば写真に撮って連絡してほしい」と呼びかけている。市環境共生課☎096(328)2352、県自然保護課☎096(333)2275。(樋口琢郎)

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