ツマアカスズメバチ確認10年 発見数減も「油断できず」 巣探索システム開発中、秋実用化へ 長崎・対馬

 長崎県対馬市で外来種「ツマアカスズメバチ」が国内で初めて確認されてから、今年で10年。官民連携の取り組みの効果なのか、近年は巣の確認数などは減少傾向だ。関係機関はさらなる効率的な駆除に向け、ドローンや人工知能(AI)を活用した巣探索システムを開発中。今秋の本格運用を目指している。

 3日夜、同市の上県地区公民館。環境省対馬野生生物保護センターと市が合同で「ツマアカ女王蜂駆除大作戦」の説明会を開いた。参加した地元住民4人に、環境省の引地稜さん(26)が最新の島内での侵入状況や女王蜂を捕獲するトラップの作り方などを伝えた。

■ 「慣れ」指摘

 対馬でツマアカの巣が初確認された2013年以降、市や環境省は巣の駆除に取り組んできたが、16年からは市民と協力する同作戦を開始。毎年各地区で説明会を開き、市民有志にトラップ資材を無償提供している。

 市や環境省の分も含め、19年には2279個のトラップを仕掛け、推定1万匹以上の女王蜂を捕獲。21年は1646個を仕掛け、推定1124匹を捕まえた。巣の発見数も、18年度に358個が見つかって以来、20年度は24個、本年度は3日時点で64個と下火だ。ただ、環境要因によっては再び爆発的に増える可能性もあるとして引地さんは「油断はできない」と話す。

 減少傾向について市自然共生課の神宮周作係長は「毎年続く駆除の効果が出ている」とみる。ただ、市民のツマアカへの関心が年々薄れているとも指摘。「発見から9年たって慣れてきている。現状に満足せず、さらに数を減らすことが大事だ」と強調する。

■ 空から撮影

 より効率的な駆除に向けて、市は通信大手KDDIとともに、今秋の本格運用開始を目指し、ドローンとAIを活用した巣探索システムを開発している。上空からドローンで森林などを撮影。コンピューターに転送した画像をAIで分析、巣のある木の位置情報などを検出する仕組みだ。

 巣の探索はこれまで、地域住民からの通報に頼っていたが、システムが実用化できれば人間の目が届かない奥深い山でも可能に。市は、ドローンを使って高所にある巣に直接薬剤を注入することなどについても今後、検討を進めるという。

■ 営巣が南下

 一方、ツマアカを巡ってはここ数年、「不気味」な傾向が確認されている。環境省や市によると、19年まで主に北部だったツマアカの営巣場所が、20年から中部に移ってきているのだ。

 仮にさらなる南下が進めば、対馬の玄関口で、多くの船舶が行き来する厳原港に近づく。神宮係長は「貨物に乗って本土にツマアカが広がるリスクが高まる」と危機感を隠さない。「島内で数を減らすのと同じく国内で対馬がツマアカの“防波堤”となることも重要なテーマだ」と気を引き締める。

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