【外来カミキリ被害】実態の把握を急げ(1月28日)

 中国などが原産の外来昆虫「サビイロクワカミキリ」による街路樹などへの被害が郡山市を中心に県内で拡大している。昨夏、国内で初めて市内で生息が確認された。研究機関による生態調査とともに、食害による倒木や落木などを防ぐ対策が急がれる。

 サビイロクワカミキリは昨年七月、市内の樹木医安斎由香理さんが食い荒らされたイヌエンジュの伐採木を調べる過程で確認した。森林総合研究所に調査を依頼し、国内初確認の外来種と分かった。

 体長は三センチ前後で、茶色の羽に白い斑点がある。幼虫は樹木の中で二年間生活し、成虫は七月から九月に木から抜け出して夜間に交尾や産卵をする。被害を受けた樹木には脱出孔のほか、木くずとふんが混じった堆積物があるため気付きやすいという。輸入に使われる木の梱包[こんぽう]材などに紛れ込んで国内に入ったと専門家はみている。

 安斎さんの調べでは、イヌエンジュが植えられている市内八カ所の通りのうち七カ所で被害が見つかった。片平町の通りでは街路樹五十四本のうち96%に当たる五十二本が食害に遭っていた。市は少なくとも九本を切り倒し、焼却処分している。

 現在、市が把握しているのは道路や公園での被害にとどまる。イヌエンジュは縁起物として住宅内の床柱や庭木にも使われており、届け出がない限り全体像をつかむのは難しい。市は二月の広報紙で注意事項や被害木の処理方法を周知しており、今後も継続的な啓発が求められる。

 カミキリムシの別種クビアカツヤカミキリはサクラやウメ、モモなどの木に深刻な被害をもたらし、環境省が二〇一八(平成三十)年に特定外来生物に指定した。指定されると運搬や飼育、販売が制限される。ただ、審査には数年間という時間を要する。サビイロクワカミキリについては、成虫になる今夏までに伐採などで駆除する必要がある。

 安斎さんや民間の専門家によると、被害は郡山市を中心に県内で拡大しており、少なくとも周辺を含む十八市町村に及ぶという調査もある。まずは県内での正確な実態把握が急務だ。県自然保護課は「被害が広がっていると推測される現地で今春以降に調査を行い、情報を共有して対策を講じたい」としている。

 冬型の気圧配置で強風の日が続いている。倒木で人や車にぶつかる事故を防ぐには、定期的な見回りや注意喚起が欠かせない。そして他県に拡散しないように、被害エリアを特定して封じ込めることが重要だ。(浦山文夫)

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