右利き・左利きは幼少期に決まる 魚の実験で富山大などが確認

 鉛筆やお箸などを片側の手だけで使う利き手。「利き」はヒトだけでなく、魚にもあるという。こうした利きが、幼い頃の経験から決まっていくことを、富山大や名古屋大などのチームが、東アフリカに生息する淡水魚の実験で明らかにした。成長してからでは、利きは獲得できないことも確かめた。

 生まれつきの骨格や体形に合わせて、動きの正確さなどパフォーマンスが高い側を集中的に使う利きは、多くの動物に見られる。これがいつ身につくのかは、遺伝や生後の学習などによると考えられてきたが、具体的にいつなのかは、長期にわたる観察の難しさもあって、多くの謎に包まれていた。

 チームは、東アフリカのタンガニイカ湖に生息し、他の魚のうろこをはぎ取って食べる鱗(りん)食魚に注目。獲物に後ろから近づき、横から回り込むように襲いかかって鱗をはぎ取る際、個体によって襲いかかる左右の側が決まっていることが知られていた。

 この魚には、生まれつきあごの右側が大きいものと、左側が大きいものがいる。これまでの研究で、生まれて初めての鱗食では左右どちらからも襲うが、経験をつむと、右あごが大きいものは獲物を右側から襲い(右利き)、左側が大きいものは左側から襲う(左利き)ようになることが分かっていた。ただ、成長過程のどの時期でも利きが身につくのかといった、時期は不明だった。

 魚を人工的に孵化(ふか)させ、人工のエサだけを与えて飼育。生後4カ月の幼魚、8カ月の若魚、12カ月の成魚になった時に初めて獲物を襲わせ、行動を比べた。

 それぞれの時期の魚を約10匹ずつ、獲物と一対一で水槽に入れて観察したところ、どの時期の魚も、初めは左右からランダムに獲物を襲ったが、幼魚は数を重ねるごとにあごの形に対応した側から攻撃するようになり、最終的に8割が利きを獲得した。若魚も5割は利きを獲得できた。一方、成魚は実験を繰り返してもランダムなままで、1匹も利きを獲得しなかった。

 また、幼魚と若魚は、経験を重ねると、水槽に入れてから襲撃を始めるまでの時間が5分の1ほどになり、成功率も上がったが、成魚は時間の短縮も捕食成功率の向上も見られなかった。

 富山大の竹内勇一助教は「成魚になってからでは、学習を重ねてもパフォーマンスが伸びなかった。利きの獲得には、幼いころの経験が欠かせないようだ。今後は、こういった利きの獲得と脳の発達がどのように関係しているのかを解明していきたい」と話した。

 論文は14日付の科学誌サイエンティフィック・リポーツ(https://www.nature.com/articles/s41598-021-04588-8)に発表された。(鈴木彩子)

+Yahoo!ニュース-科学-朝日新聞デジタル