外来水草ナガエツルノゲイトウ 関東以西で猛威、20府県に侵入

地球上で最悪の侵略的植物

 農業現場に深刻な被害をもたらす外来水草、ナガエツルノゲイトウが少なくとも20府県で確認されていることが分かった。繁殖力が強く、ため池や農地に一度侵入すると根絶は困難。大繁殖して、水稲の大幅減収や農業水利施設の目詰まりを引き起こす。“地球上で最悪の侵略的植物”とも呼ばれ、農業関係者は警戒を強めている。(北坂公紀)

 ナガエツルノゲイトウは南米原産の多年草で、国の特定外来生物に指定されている。最大の特徴は繁殖力の強さで、わずか2センチほどの断片からでも芽や根を出して増殖するので駆除が難しい。発生農地で草刈り機やトラクターを使うと、散らばった植物片から爆発的に増える恐れがある。

 国立環境研究所によると、1989年に兵庫県尼崎市で初めて発見されて以降、現在までに千葉、神奈川、静岡、滋賀、京都、大阪、兵庫、徳島、香川、福岡、佐賀、熊本、鹿児島、沖縄の14府県で分布を確認。さらに、日本農業新聞が7月上旬、各県に聞き取りなどを行ったところ、同研究所が把握する以外に茨城、三重、奈良、島根、山口、長崎の少なくとも6県で確認されていることが分かった。

 農水省は「ちぎれた植物の塊が水路や揚水ポンプを詰まらせる被害が大部分を占める。近年、被害は増えている」(植物防疫課)と指摘。また、水稲を倒伏させて、収量や品質を低下させる被害も懸念されており、「昨年度、農地への侵入を初めて確認した」(茨城県)といった声もある。

淡路島のため池が“草むら”に

 「全国で最もため池密度が高い地域」とされる兵庫県の淡路島。島中西部にある農業用ため池「本田池」(洲本市)でもナガエツルノゲイトウが深刻な被害をもたらしている。

 「実はここはため池なんです」。本田池を管理する地域組織のメンバー、岡本賢三さん(60)は、辺り一面に広がる“草むら”を見詰めてこう話す。

 本田池でナガエツルノゲイトウが初めて確認されたのは昨年10月。近隣のため池に比べて水草が異常に繁殖していることに違和感を感じ、県に問い合わせたところ発覚した。当時は池の3割を覆う程度だったが、現在ではほぼ全面を埋め尽くすほどに増殖。水面はほとんど見えず、辺り一面に草むらが広がっているように見える。

 県は「現状、本田池への侵入経路はよく分かっていない」(自然環境課)と話す。

 県によると、島内では現在、本田池とその下流にある大久保池の2カ所で生息を確認。さらにナガエツルノゲイトウは水草であるにもかかわらず陸上でも繁殖でき、6月には本田池周辺の畑に広がっているのが見つかった。

根絶へ遮光シート

 本田池では現在、地域住民が県や市民団体と連携して駆除に取り組む。池に遮光シートを張って光合成を阻害し枯死させる。本田池を取水源としていた水田約1ヘクタールには別のため池から水を送る。ただ、それでも駆除まで数年ほどかかるという。

 岡本さんは「一度侵入すれば根絶は極めて難しい。これ以上、被害を広げないためにも、関係者が一丸となって封じ込めに動く必要がある」と訴える。

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