琵琶湖のアメリカナマズ根絶か 瀬田川上流で20年秋から捕獲ゼロ

 琵琶湖につながる瀬田川の洗堰(あらいぜき)上流で、繁殖が懸念されていた特定外来生物のアメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)が、2020年秋以降、1匹も捕獲されていない。滋賀県水産試験場は「駆除が功を奏し、生息数を抑制できている」とみており、琵琶湖でのアメリカナマズ根絶に近づいた可能性がある。ただ、洗堰下流での繁殖は続いており、同試験場は「手を緩めると再び繁殖する」と警戒、調査・駆除を継続し状況を見極めるとしている。

 環境省などによると、アメリカナマズは北米原産で、食用として1971年に日本に輸入された。大きいものは1メートルを超えるという。一部地域では今も養殖されている一方、茨城県の霞ケ浦や、京都、大阪両府、奈良県の淀川水系で自然繁殖が確認されている。生態系を脅かすだけでなく、ワカサギやアユ、エビなどを食べて漁業被害をもたらす恐れがある。背びれ、胸びれの鋭いトゲで、漁業従事者らが負傷することもある。

 琵琶湖と瀬田川では2000年代に入って生息が確認され、ブラックバスなど他の外来魚のように大量繁殖するのではないかと懸念された。アメリカナマズの主な生息域は瀬田川で、そこから琵琶湖・南湖、更には北湖に拡大する可能性も指摘されてきた。  県水産試験場は、琵琶湖への拡散を阻止するために、アメリカナマズが集中的に生息する瀬田川の洗堰上流域での徹底駆除に力を入れた。19年度の同試験場の調査や県漁業協同組合連合会の駆除事業では、過去最高の191匹を捕獲。同じ水域で20年度は53匹に減少し、20年11月の1匹を最後に捕獲情報がなくなった。同試験場が21年3~6月に行った毎月の定期調査でも、洗堰上流ではアメリカナマズが見つかっていない。

 ◇下流では捕獲続く

 同試験場主査の石崎大介さん(40)は、洗堰上流の捕獲がないことについて「19年度の駆除の成果が出ている。かなり個体数が減っているとみられる」と話す。アメリカナマズは4年程度かけ体長40センチほどに成長してから、繁殖能力を得るとみられている。石崎さんの分析では、19年度に洗堰上流で、幼魚(体長約20センチ)の推定生息数のうち7割を駆除できたという。石崎さんは「幼魚が繁殖するようになるまで猶予がある。琵琶湖全体に広がると手をつけられなくなる。徹底的な駆除を継続し、繁殖を食い止めたい」と話す。

 アメリカナマズを研究する国立環境研究所琵琶湖分室(大津市)の特別研究員、吉田誠さん(33)は「洗堰上流で駆除が成功したら、琵琶湖での大繁殖は避けられるだろう。生息数ゼロとは言えなくても、低密度に管理することが重要だ」と指摘する。

 一方、石崎さんによると、洗堰下流では20年度に過去最高の170匹のアメリカナマズを捕獲、今年も捕獲は続いている。瀬田川下流の天ケ瀬ダム(京都府宇治市)で繁殖しており、ここから遡上してきた可能性があるという。石崎さんは「京都府と協力し天ケ瀬ダムでの駆除を進めることが今後の課題になる」としている。【庭田学】

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