東大構内に国内初の外来カメムシ 「一目で」発見の学生

 昆虫のカメムシの一種である「オオクロマダラナガカメムシ」が、国内で初めて確認された。発見したのは千葉県成田市在住の大学生。外来カメムシの国内初確認は珍しいことで、大学生が県立中央博物館(千葉市)の研究員と共同で研究を進めた。標本や成果が同館で展示されている。6月27日まで。


 発見者は、東京大学農学部4年生の中村涼さん(21)。2019年10月の昼休み、同大学本郷キャンパス(東京都文京区)構内を散歩中に、建物の壁にいたカメムシを偶然発見した。国内に生息する他の種との外見の差異はわずかだったが、「日頃から図鑑を読んでいるので、一目で日本にいない種だとわかった」という。
 知り合いだった同館研究員の伴光哲(てるあき)さん(34)=現大利根分館研究員=にすぐに写真を送った。すると、台湾や中国に分布し、国内ではこれまで確認されたことがない「オオクロマダラナガカメムシ」という種であることがわかった。
 国内での生息が確認されているカメムシは、1300種以上いる。国内外の文献を参照し、最終的には、同館に収蔵されている台湾産の標本と大きさや色、模様などを複合的に比較して判断したという。
 発見したカメムシは、原産地からの物資などと一緒に国内に入ってきた可能性がある。中村さんと伴さんの共同研究として、昨年12月に日本昆虫分類学会誌に英字論文が掲載された。
 中村さんは物心がついたときからの生物好き。中学生の頃から標本作成や研究報告を始め、今では自宅に数万点の標本があるという。「昆虫は種類や形、色が多様で、見ていて飽きない。昆虫以外の生物にも興味があるが、手が回らない」と話す。将来は昆虫の研究職に就くことを目指している。
 伴さんによると、新たに確認されたカメムシは、国内の生態系などに直ちに大きな影響を与える恐れはないという。「見慣れない虫を見つけた人がいたら博物館に情報を寄せてほしい。学芸員として、今後も採集や研究の楽しさを伝えていけたら」と話す。
 県立中央博物館は月曜日休館(祝日・振替休日のときはその翌日)。入場料(通常期間)は一般300円、高・大学生150円。問い合わせは同館(043・265・3111)へ。(上保晃平)
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