地球上で生態系が完全なのは3%のみ…これすら過大評価?

 人間の影響による動物個体数の減少と生息地の破壊を免れ、完全な生態系が維持されている場所は、地球上の3%にも満たないという分析が出た。気候危機の影響を考慮していないため、これすらも実際には「過大評価」の可能性があるとの指摘もある。


 英国のケンブリッジにある鳥類保護のための国際組織「バードライフ・インターナショナル」の科学者たちが主軸となった国際共同研究チームは18日、「土着動物の個体数が保たれ、生息地が完全に残っているのは、地球上のすべての陸地の中でアマゾン、コンゴ熱帯雨林、東シベリアとカナダ北部のツンドラ地域、サハラの一部地域だけだ。ゾウやオオカミのような重要な種を、生息地が損なわれた地域に再導入すれば、全地球の20%まで生態系を復元できるだろう」と発表した。研究チームの論文は、無料で公開される国際学術誌「フロンティアーズ・イン・フォレスト・アンド・グローバル・チェンジ(frontiers in Forests and Global Change)」最新号に掲載された(DOI : 10.3389/ffgc.2021.626635)。
 先行研究は、野生地域についての衛星映像をもとに、地球表面の20〜40%は人間の影響を受けていないと推定していた。今回の研究チームは、人間影響地図(ヒューマン・フットプリント・マップ)と国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(絶滅危惧種区分リスト)に登録された7000種あまりの動物の1500年代と現在の分布図を対照する方法により分析した。その結果、完全に生態系が保全されている地域は、全地球の2.9%にも満たないことが分かった。7000種あまりはほとんどが哺乳類だが、鳥類、魚類、樹木類、爬虫類、両生類の一部も含まれている。南極は分析から除外された。
 研究を主導したバードライフ・インターナショナル主要生物多様性地域事務局長のアンドリュー・プランプトル(Andrew J. Plumptre)氏は「8〜10%にはなると予想していた。しかし完全な生息地と思われていた場所のほとんどで狩猟や密猟、外来種の侵入、疾病などにより生物種が消えつつある」と述べた。同氏は、論文で提示した種の分布図が精巧なものではないということは認めつつも、3%という数値は実態にほぼ近い概算値だろうと付け加えた。
 研究チームの分析では、コンゴのヌアバレ・ンドキ国立公園、タンザニアのセレンゲティとンゴロンゴロ、アマゾンのアルトリオネグロ先住民地域、ロシア北部のグレートシベリア氷湖、チリ南部のカウェスカル国立公園などが、生態的な完全性が保たれている場所として挙がっている。
 研究チームは、これらの地域は非常に希少で保存すべき特別な場所であるにもかかわらず、現在、保護区域に指定されているのはこのうち11%に過ぎないと指摘した。今年1月にはフランス、ドイツ、英国、カナダなどの50カ国以上が、2030年まで自然破壊を中止することで地球の3分の1を保護することを約束している。
 プランプトル氏は、米国のイエローストーン国立公園にオオカミを再導入して生態系を復元した例を挙げ「人間の影響がまだ少ない地域で、消えた1〜5種の動物のみを集中的に復元しても、完全な生態系を20%までは増やせるだろう」と述べた。ゾウは森に種をまき散らし、重要な開豁地を作る。オオカミはシカやヘラジカの個体数の調節に重要な役割を果たす。
 しかし一部の科学者は、数世紀前の土着動物の状況は把握が難しく、気候危機の影響を考慮していないなどの研究の限界のため、研究チームが示した3%という数値すら過大評価である可能性があると指摘している。
イ・グニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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