インド南部やスリランカなどが原産の外来種ワカケホンセイインコが、前橋市内を拠点に20年以上にわたり野生化し、じわりと生息数を増やしている。愛らしい姿は繁殖地である同市元総社町の総社神社のご朱印に採用され、地域おこしに一役買っている。一方で、生息地では農作物を食い荒らす「害鳥」とされているため、専門家は「今後の推移には注意が必要」と警鐘を鳴らしている。
「キャア、キャア」――。甲高い鳴き声が境内に響いていた。3月下旬の総社神社。満開に近づいた桜に10羽ほど集まり、鳴きながら花をついばんでいた。宮司の根岸義貴さん(58)によると、同神社では少なくとも1998年頃に境内で20羽ほどが繁殖し、現在では約30羽にまで増えているという。
ワカケホンセイインコを見つけては指さし、撮影する参拝者の姿もある。昨年から販売を始めたつがいのインコを描いたご朱印は好評だという。
日本鳥類保護連盟によると、ワカケホンセイインコは南国を想起させる全身の色鮮やかな黄緑が特徴で、尾を合わせた体長は30〜40センチになる。ペット用に輸入が始まったのは、1960年代。野生化は全国的に確認されている。
寿命が30年と長いことから、飼育できなくなって捨てられたり、逃げ出したりした一部が繁殖したとみられる。現在は前橋のほかに東京、神奈川、埼玉を行動圏にするグループと、千葉市を中心とするグループの三つがある。
同連盟の松永聡美研究員によると、前橋グループは総社神社の半径約3キロ圏を行動範囲にしているという。東京や千葉のグループとは距離が離れていることから、前橋周辺で野に放たれた複数の個体が繁殖した可能性が高いという。総社神社には営巣に適した高木のケヤキが多いことから、定着したとみられる。ただ、首都圏のグループに比べて調査が進んでおらず、詳しい実態は不明だ。
ペットとして好まれる一方、インドなどでは害鳥とされている。現時点で国内での農業被害や生態系への深刻な影響の報告はないが、本来の生息域を越えることは生物多様性の観点からも好ましくない。松永研究員は「農業被害などのほかにも、騒音やふん害トラブルの懸念がある。今後の動向の把握が必要だ」と指摘している。
夕刻になると一斉に同神社のねぐらに戻るワカケホンセイインコを迎える根岸さんは「ここへ来た経緯はよく分からないが、インコに罪はない。そっと見守っていきたい」と話す。
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同連盟では、目撃情報を募集している。問い合わせはメール(research@jspb.org)または電話(03・5378・5691)へ。
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