生産低迷が続く琵琶湖産淡水真珠。その救世主はナマズ?―昭和後期に国内外で人気を博したものの、現在は年間生産量20キロほどにとどまる湖産真珠。復活の鍵は母貝の安定供給とみる滋賀県水産試験場(彦根市)は昨春から真珠養殖業者と協力し、母貝育成に不可欠な寄生魚としてナマズを活用する実証実験に取り組んでいる。水温変化に強く飼育しやすいため、業者からは「母貝の生産量が増える見込み」と好評といい、同試験場は手応えを感じている。
真珠層が厚く輝きの良さが魅力の湖産真珠。県水産課によると、最盛期の1970年ごろは年6千キロ以上生産し、80年には生産額41億円に達した湖産真珠は、水質悪化による母貝の生育不良や安価な中国産の台頭が原因で80年代後半から激減。2012年には11キロまで落ち込んだ。
県は水質改善、生産技術や販売促進支援などに尽力。生産量は回復傾向だが、母貝育成の難しさが足かせとなり、19年は19キロだった。18年に策定した県振興計画の20年目標量の50キロには程遠い。
湖産真珠の養殖は母貝に固有種のイケチョウガイを使う。海水真珠養殖で一般的なアコヤガイは、稚貝を真珠の基となる貝の膜や核を入れることができる成貝まで成長させるまでに2年、入核から出荷まで1〜2年なのに対し、イケチョウガイはそれぞれ3年かかる。さらに成長の仕方が独特で、4〜6月に受精後1カ月ほどで雌貝から放出された約0・3ミリの幼生は、特定の種類の魚のえらなどに約2週間寄生する習性がある。
従来は寄生魚としてニジマスとヨシノボリを活用するのが一般的だった。ただ、ニジマスは県の養鱒場で容易に入手できる代わりに、水温が23度を超えると弱るため4月しか使えなかった。ヨシノボリは入手が難しい上に小型魚なので飼育が困難と、それぞれ問題点があった。
「ナマズが良い」との声は養殖業者の中にかつてからあり、天然ナマズを使う業者もあった。肉食性のナマズは養殖が難しく、国内で技術が確立したのは約20年前という。試験場では、寄生魚としての活用を見込んで5年ほど前から取り組み、2年前に安定的に養殖できるようになった。昨春初めて6業者に計約千匹を試験的に提供した。
「寄生数も多く管理しやすい」との養殖業者の声を受け、試験場は今春以降も継続。最適なナマズのサイズや寄生密度の解明を進める。担当者は「母貝が3年間で成長する中で最も人が関与できる工程。効率的な手法の開発が安定供給に貢献できる」と話す。
提供を受けた真珠養殖業者の1人、草津市の内湖・平湖で取り組む酒井京子さん(草津市志那町)は昨春、ニジマス1回、ナマズ4〜5回の寄生作業を行い、例年の3倍近い稚貝1万4500匹を生産できた。「2年前まではヨシノボリを自分で捕獲していた。手間を省けただけでなく、貝のペースに合わせ、いつでも寄生魚が手に入るので安心感がある」と喜び、今後もナマズを使い続ける考えだ。
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