ダム湖が一面緑色に 外来種の水草、2年連続大発生 除去費億単位、アユの姿も消え… 鹿児島・さつま町

 さつま町の鶴田ダムの貯水池・大鶴湖で、外来水草が昨年に続いて大量発生している。管理所が除去を進めているが、繁殖力に追いつかない。除去費用は前年度の1億5千万円を超える可能性もある。同町と伊佐市にまたがる湖はアユの産卵地で、生態系への影響も懸念されている。


 12月上旬、鶴田ダムの天端から大鶴湖を望むと、専用船2隻が作業を進めていた。湖面が見えるのは船の周辺だけ。緑色の水草は、ダムから約12キロ上流の伊佐市の曽木の滝近くまで広がる。
 専用船は大型のカッターで水草を刈り、運搬用の船に積み込む。岸からは4トントラックで敷地内の仮置き場に運ぶ。1日の処理量は60〜70トン。仮置き場には、一部茶色く変色した草が積み上がっていた。
 管理所によると現在、水草は約200万平方メートルの湖面の半分以上を覆う。外来種ボタンウキクサとホテイアオイで、環境省は生態系を壊す恐れがあるとして駆除を呼び掛ける。水面を覆い尽くし、水中の光や酸素不足から魚介類への悪影響も懸念され、枯れて沈むとダムの放流を妨げる可能性がある。
 水草の群生がみられるようになったのは2008年度。増減を繰り返し、19年度は湖面の半分まで広がった。専用船を初めて使って駆除作業に着手。しかし、暖冬で枯死しなかったこともあり、約10万平方メートルが残った。それらが再び繁殖し、9月以降一気に増えた。
 生態系への影響を心配する声も上がり始めている。1〜3月に大鶴湖でアユの稚魚を取っている川内川上流漁協(伊佐市)の今年の採捕量は、目標の50分の1の1キロにとどまった。山田満組合長(65)は「このままでは来年も難しいだろう。漁協運営にとって死活問題」と嘆く。
 川内川漁協(さつま町)の舟倉武則組合長(74)も「今年は湖に流れ込む川で、アユの姿を見なかった」と表情を曇らせる。両漁協は7月、管理所に早期対策を求める要望書を出した。
 ダムは6〜8月、大雨に備え水位を低くするため、専用船での除去作業ができない。管理所は昨年より2カ月早い9月末から専用船を投入した。11月からは2隻体制にし、同月末までに約2千トンを回収した。
 水草や流木の除去費は、年約8億円のダム維持費から賄う。大量発生前の費用は年4千万円程度。前年度は約6千トンの回収で約1億5千万円かかった。本年度も同規模を想定しており、毎年実施する堆積土砂の測量を全て取りやめ、予算を確保した。
費用がかさむ場合は、緊急性のない補修工事の先送りも検討する。三浦錠二所長(57)は「春までに全て回収できるように最優先で進める」と話す。
 大鶴湖の上流には水草の群生があり、今後も株が流れ込む可能性がある。ホテイアオイの生態に詳しいNPO法人オアシス水環境研究会(志布志市)の本村輝正理事長(84)は「湖水の富栄養化も異常発生に関係しているのではないか。流域全体で環境を考える必要がある」と指摘する。
【ボタンウキクサとホテイアオイ】
 それぞれ環境省の特定外来生物と緊急対策外来種、重点対策外来種に指定されている。ボタンウキクサはアフリカ原産で別名ウオーターレタス。南アメリカ原産のホテイアオイはウオーターヒヤシンスとも呼ばれ、いずれも家庭などで栽培していたものが野生化したとみられる。
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