大津市の瀬田川洗堰(あらいぜき)上流で、北米原産の特定外来生物「チャネルキャットフィッシュ(通称アメリカナマズ)」の捕獲数が急増している。大雨で洗堰を全開放流した際に上流に移動するとみられ、昨年は幼魚が大量に捕獲されて上流での繁殖も裏付けられた。大きくなると全長80センチ程度になり、魚も食べる雑食性。洗堰上流には琵琶湖までの障壁がなく、漁業への影響を懸念する滋賀県は「洗堰上流での根絶」に向けて駆除を強化している。
バシャバシャッ―。たらいの中でチャネルキャットフィッシュがのたうった。「大きいでしょう。ひれのとげが固くて、グローブも貫通するんですよ」。生態調査のため2015年から飼育する県水産試験場(滋賀県彦根市)の石崎大介主査が、背びれと胸びれを指さした。
琵琶湖固有種のビワコオオナマズより小ぶりだが、一般的なナマズ(日本ナマズ)より大きく迫力満点。8本のひげは在来ナマズのギギと同じ。幼魚は見分けがつきにくいが、体表に黒い斑点があるのが特徴だ。1970年代に食用で国内に持ち込まれて河川に逃げ出したとみられ、オオクチバス(通称ブラックバス)同様に無許可の飼育や生きたままの移動を禁じる「特定外来生物」に指定されている。
琵琶湖では2001年に北湖で初めて確認され、今年11月末までに計51匹が捕獲された。一方、瀬田川の洗堰上流では14年に初確認され、7年足らずで280匹を超えた。瀬田川全体の捕獲数は計769匹に上る。すでに南湖に移動している魚もいるとみられるため、県は18年度から駆除に本腰を入れ始め、19年9月には生後2年目とみられる幼魚を洗堰上流で大量に捕獲。緊張感が一気に高まった。
■各地で増殖確認
国内では東北から関東、中部地方の川や湖での増殖が確認されている。茨城県の霞ケ浦では定置網にかかったワカサギを食い尽くすなど食害が深刻といい、滋賀県も「増えればオオクチバスやブルーギルと同等の被害を及ぼす可能性がある」と問題視する。
生後3〜4年で繁殖可能になり、メスは1回1万粒もの卵を産む上、ふ化するまでオスが卵を守る習性がある「増えやすい魚」(石崎さん)。ロープに釣り針を付けたはえ縄や、籠網で駆除するほか、釣り人には湖岸などに設けられた外来魚回収ボックスの利用を呼び掛ける。
下流で釣り上げられるケースも報告されている。国立環境研究所琵琶湖分室(大津市)は、19年からギギなど在来ナマズとの見分け方を記して情報提供を求めるチラシを京都、大阪府でも配布。12年以降の捕獲や目撃で約60匹分の情報が集まった。宇治川や淀川が多いが、木津川では稚魚の報告もあった。桂川ではまだ把握事例はないという。
増殖すれば、えさや生息環境が似た在来魚の存在を脅かす上、病気を媒介する恐れもあるといい、同分室の吉田誠特別研究員は「モニタリングし、漁業や生物に影響しない程度に低密度で管理する必要がある」と話す。
チャネルキャットフィッシュに罪はないものの、今後、私たちはどう付き合っていけばいいのだろうか。吉田さんは「とげが厄介ですが、おいしい魚なので食べてみては」と提案する。プリッとした白身は、フライにしても、ソテーにしても美味だとか。釣った場合はその場で締めてから持ち帰り、ペンチなどでとげを切除することも忘れないように、とのことだ。
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