ペットから野生化したインコ、関東中心に増加…30年で2倍

 インド南部やスリランカなどが原産の外来種ワカケホンセイインコが、じわじわと生息数を増やしている。継続的に調査している日本鳥類保護連盟(東京)によると、東京や神奈川を中心に、この30年で2倍近くの約1500羽になった。農業や生態系への影響はないのだろうか。(石川千佳)


■■高木に数百羽
 「ピィー、ピィー」
 川崎市内の公園は日没前になると、急に騒がしくなる。日中、周辺で過ごしていた数百羽ものワカケホンセイインコが、高木のねぐらに戻ってきたのだ。家族単位で過ごすことが多く、普段は「キャア」と鳴くが、ねぐらでは甘えたような鳴き方をする。
 国立環境研究所によると、ワカケホンセイインコは1960年代からペット用に輸入され、その後、捨てられたり、逃げ出したりした一部が野生化。69年に東京都心で初めて繁殖が確認された。全身が色鮮やかな黄緑で、尾を合わせた体長は30〜40センチ。寿命は30年と長い。
■■寒さに強い
 新潟や京都、宮崎など18都府県で生息が確認されたが、現在は関東以外ではほぼ見られない。同研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長は「都市部はタカなどの天敵が少ない。安全な公園などで繁殖できたのだろう」とみる。
 ケヤキなど高木の樹洞をねぐらとすることが多く、柿などの果実や冬芽など、様々な植物を好んで食べる。寒さにも強く、同連盟の研究員、松永聡美さんは「原産地では標高1600メートルの山に生息していることもある。日本の秋冬も耐えられるのだろう」と推測する。
 松永さんらは昨年5〜6月、雄1羽に全地球測位システム(GPS)を装着して行動範囲を調べた。この1羽は、東京都世田谷区のねぐらと約8キロ離れた営巣地の間を往復し、その間に民家の餌台に立ち寄ったり、公園でビワやヤマモモを食べたりしていたが、農業被害などは確認されなかった。
 松永さんは「日本では目立った被害は出ていないが、今後のことはわからず、注意深く観察したい」と話す。
■■海外で農業被害
 海外では農業被害の報告があり、インドではヒマワリ、移入先の米国ハワイではトウモロコシやマンゴー、英国ではブドウなどが食い荒らされている。日本では生息域が競合するムクドリへの影響も確認されておらず、逆にカラスなどに捕食されるケースがあるという。国内外で野生インコを撮影している写真家、岡本勇太さん(33)は「外来種だからといって悪い目で見ず、そっと見守ってほしい」と呼びかける。
 一方、野鳥に詳しい森林総合研究所・川上和人主任研究員は「対策の優先順位は高くないが、生物が本来の生息域を越えることは、生物多様性が失われることになる」と指摘している。
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