豊かな自然に囲まれた和歌山県田辺市の国立公園で、外来種の「アフリカツメガエル」が大繁殖。危機感を募らせた地元の人たちは、池の水を全て抜く、大がかりな捕獲作戦を始めました。徹底した駆除を進める背景には、何があるのでしょうか?
和歌山県田辺市の鳥ノ巣半島。
豊かな自然に囲まれた里山の風景が残り、国立公園に指定されています。
今、この半島に点在する池である異変が…
本来日本にいるはずのない外来生物、アフリカツメガエルが大繁殖しているのです。
そこで地元の人たちがとった行動は…なんと、ため池の水を全て抜いて駆除!
なぜ、ここまで大掛かりな手段に出たのでしょうか。
“熱帯魚のエサ“や…動物実験でも取り扱い
手足のツメが特徴のアフリカツメガエル。一度に数千個の卵を生み繁殖力はとても強く、野外に放されると、ヤゴやゲンゴロウなどを食べつくし、生態系を乱す恐れがあるのです。
その一方で、飼育が簡単なためペットや熱帯魚のエサ、大学の実験動物など広く扱われています。
――Q:エサ用だったら何のエサ?
【観賞魚店は…】
「アロワナ系ですね(田辺市付近でかつて)アロワナを扱う店があちこちにあって、閉めた店も多くなり、そういう店が(アフリカツメガエルの)処分に困ったり、飼った人が大きくなりすぎて鳥ノ巣半島に放ったのかな」
鳥ノ巣半島では2007年に初めて生息を確認。
今では約40か所あるため池のうち、30か所以上に繁殖してしまいました。
【池の持ち主】
「駆除してもらったら結構やわな。在来種というのがなくなると寂しいですやん」
“底の泥に潜る“ので…根絶には「水を抜く」しか
危機感を持った和歌山県は去年、地元の高校や中学校の生物部などと協議会を作り、本格的な駆除を開始。今回、その取り組みに同行しました。
ここはアフリカツメガエルが目撃されたため池。
【記者リポート】
「今から池の水抜き作業が始まります。アフリカツメガエルは池の中にいるんでしょうか」
アフリカツメガエルは底にある泥に潜るため、根絶するためには水を抜くしかありません。
1日かけて底が見えてきました。
【生物部顧問】
「恐れるな。大丈夫、(多少沈んでも)底はある」
【生徒】
「あぁ、イヤだ」
すると…
【生徒】
「先生なんかとれました」
在来種のヤゴがいました。
さらに…特定外来生物のウシガエルがいました。
記者も探してみると…
【記者】
「うわ、何これ」
外来生物のアメリカザリガニです。
アフリカツメガエル以外にもやはり外来種がいるようです。
調査すること3時間、アフリカツメガエルの姿は見当たりません。
一方、同時に駆除が行われていたもう一つの池では動きが!
【生徒】
「カエルとりました」
ついに発見か!?
【記者】
「あ、いたいた。アフリカツメガエルですねまだ小さいですね。2、3cmくらい。尻尾生えているやつもいますね」
この池では去年も駆除を行いましたが、今年も4匹見つかってしまいました。
13カ所・1000匹以上を駆除も…根絶は「難しい」
捕獲を終えた後は「根絶の切り札」だという巨大な網を池の底へ設置。
再び水を張ってもアフリカツメガエルが泥の中から出てこられないようにするのが狙いです。
【県立田辺高校・中学校生物部顧問・宇井大晃さん】
「今日のため池は2つとも水生生物がほとんど見られなかった。アメリカザリガニとアフリカツメガエルの捕食圧がかかってて(在来種の)数が減っているのは間違いない。これがいいという方法がなくて、今やっている方法もこれをやれば根絶できるというわけではない」
協議会ではこれまで13カ所の池の水を抜き、1000匹以上を駆除しました。
そのうち、5か所では確認されなくなったといいますが、根絶にはまだ長い時間がかかります。
一つのため池から…水路を伝い拡大か
そもそも、なぜこの鳥ノ巣半島でこれほどにも繁殖したのか。
【県立田辺高校・中学校生物部顧問・宇井大晃先生】
「もともと水田用のため池ですので、水田同士がくっついている、水路もつながっていて、流されて来て拡大しているとは思います」
誰かが逃がしたものがひとつのため池で繁殖し、水路を通じて一気に増えた疑いがあります。
和歌山県は去年、アフリカツメガエルを野外に放すことなどを禁じる条例を独自に制定。
しかし、罰則がなく、根本的な解決は難しいため、駆除作戦が頼みの綱です。
【和歌山県・自然環境室・吉田久視子主査】
「鳥ノ巣半島の中で封じ込めるのがまず第一と考えている。今やらないとどんどん広がって大変なことになってしまう」
一度繁殖すると歯止めがきかなくなる外来生物。
失われた環境を取り戻すことはできるのでしょうか。
カンテレ「報道ランナー」2020年9月30日放送より
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