「ジャンボタニシ」が大量発生 苗食い荒らす外来種 「拾ってもきりがない」/兵庫・丹波市

 兵庫県丹波市市島町鴨庄地区の岩戸、喜多地区を流れる岩戸川沿いの田んぼで、水稲の苗を食い荒らす外来種「ジャンボタニシ」が大量発生している。対策を検討しようと、このほど住民らによる学習会が喜多自治会公民館であった。生産者約20人が、気温が下がる冬場に田んぼをすき、寒風にさらして凍死させる駆除方法などを学び、生息地を地図に落とし込んだ。専門家は、岩戸川が合流する由良川の下流域に広がらないように、岩戸川で食い止めるよう助言。重点的に対策を講じる場所などを改めて検討する。


頭悩ます住民、駆除へ学習会
 ジャンボタニシは正式名「スクミリンゴガイ」。環境省の「生態系被害防止外来種リスト」の重点対策外来種。南米原産の巻貝で、殻高約3センチ。殻は黄褐色―黒褐色で、10―15本の縞を持つ。卵は直径約2ミリの球形でピンク色。野外での寿命は2年程度で、雌の成貝は年間20―30回産卵し、2000―8000個の卵を産み、2―3週間でかえる。同県内では播磨地方や淡路島に生息している。
 水生生物に詳しく、同三田市で同タニシの駆除経験がある県立人と自然の博物館の三橋弘宗研究員(49)は、「苗か農機に付着して外部から流入したと思われる」と推測し、個体を減らすには、▽見つけるたびに卵塊をつぶす▽貝を拾って殺処分する―の人力による駆除を推奨した。使える農薬も一部あるが、「有機農業の里」の地域イメージを損なわないためにも外部から人を入れ、人海戦術による除去を提案した。環境省の外来生物対策の補助金の利用も検討の余地があるとした。
 県丹波農業改良普及センターの吉村佳典普及員(57)は、卵には毒があり、貝には寄生虫がいる可能性があるため、素手で触らないよう注意を促した。南米原産で、大きい個体ほど寒さに弱いことから、冬の冷え込みがきつい日に12センチほどの深さでゆっくり田んぼをすいて寒風にさらすことで、土中で越冬している貝を殺せると説明。しかし暖冬傾向と、小さな貝ほど耐寒性が強いことが分かっており、全てを駆除することは難しいとした。また稚苗ほど被害に遭いやすいことから4葉期以上の中苗―成苗を植えるのも食害を防ぐ一策と助言した。
 生産者たちは、苗を植えた田んぼに大勢入られては人が苗を傷めかねない、人力で何とかできる量ではないなど、「現実的でない」と抵抗感を示した。一方、冬期の耕転作業は、前向きに取り組む発言があった。
「1時間しないうちに一斗缶が一杯に」
 参加者の話を総合すると、5年ほど前から見られるようになり、岩戸川の上流から下流へと広がった。喜多自治会は、農地面積37ヘクタールのうち30%程度のほ場で生息している。
 田植え後、1週間―10日で苗を食べられ、田んぼの中にぽっかり、円形脱毛症のように稲が生えない部分ができる。その分収量が落ちるため、田植えからしばらくの期間は苗を踏まないよう気をつけながら、手作業でタニシを拾って駆除している。「1時間しないうちに一斗缶が一杯になる」「ほ場を1周するころには、拾い始めた所に別の個体が現れている」と、生育密度が高い田んぼの耕作者は悲鳴を上げた。
 川に流すと下流に迷惑がかかるため、燃やしたり、車で踏みつけたりして殺処分している。「自分の田んぼだけ全部駆除しても、周りから入ってくる」「岩戸川、用水路にいる分も駆除しないと、効果が薄い」と、やり場のない怒りを含んだ発言が相次いだ。
苗植え直した年も「薬も使えへん」
 腰を伸ばしたまま貝を拾う爪の付いた網と、卵塊をこそげ取る道具を自身で考案するほど被害に悩まされている竹内康夫さん(64)は、「2反のほ場の半分ほどの苗を食べられ、植え直した年もあった。捕まえても捕まえてもきりがない」と言い、特別栽培米「さつき米」生産者の西山一雄さん(69)は、「薬も使えへんし、かなわん」と、厄介者との戦いにへきえきしていた。
 県丹波農業改良普及センターによると、丹波市内では岩戸川以外では、柏原町内で1個体の目撃例がある程度で、被害は局地的にとどまっている。
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