新型コロナウイルスに続き、アジアから新たな脅威が現れたとして「Murder Hornets」がアメリカで話題になっている。殺人バチ、つまりスズメバチのことだ。
日本をはじめとしたアジア地域に分布するオオスズメバチが、アメリカのワシントン州やカナダで確認された。どちらも最初に確認されたのは昨年末だが、ニューヨーク・タイムズが週末に「殺人バチがアメリカ上陸」と報じたのを皮切りに大騒ぎとなっている。
CNNやCBS、NBC、フォックス、タイムなどなど大小さまざまなメディアがその脅威を伝え、人気コメディアンのパットン・オズワルトらのツイートで、トレンド入りするほどだった。
日本では年間50人が刺されて死んでいる。女王蜂は5cmにもなり、時速32キロで1日に何キロでも飛ぶ、毒蛇と同じくらいの毒があると恐れられている。
なかでも、ミツバチの頭を切り落とし、ほんの数匹が数時間のうちに巣を壊滅させてしまう凶暴性が多く報道されている。
一方で、スズメバチの見た目が「漫画のようだ」という記事もある。虎のような色の縞模様、トンボのような細い羽、そして、しずく型の目がスパイダーマンみたいというのだ。
ワシントン州では外来のスズメバチが環境や公衆衛生によくないとして、注意喚起のウェブサイトを作った。ウェブに寄せられた目撃情報は、非公認ではあるが西海岸から東海岸まで広範囲に及んでいる。
蜂をおびきよせるトラップを作り、捕まえたサンプルを送るプロジェクトが始まった。おとりに使われるのはオレンジジュースにみりんをいれたもの。みりんを入手するのはアメリカ人にはやや敷居が高いが、名古屋で実際におこなわれているやり方だそうだ。
州の担当者は、もし、生きたまま捕まえることができたら、無線の追跡装置をつけたいとコメントしている。スズメバチの大きさならそれも可能だという。
暖かくなり、ハチはこれから本格的な活動シーズンを迎える。ここ2〜3年のうちに壊滅させなければ手遅れになる。メディアは生息域が広がる前に防ごうという論調だ。
ちなみに、各メディアが使っている「Murder Hornets」という表現は、京都産業大学の高橋純一准教授が紹介したニックネームからきている。その他には「Asian giant hornets(アジアの大きな蜂)」という通称名も頻出している。
実は、スズメバチは、Wikipediaでは「Japanese giant hornet(日本の大きな蜂)」という項目になっている。「新型コロナウイルスが中国から来た」と言うだけで人種差別問題に発展してしまうアメリカで、メディアが「Japanese」という表現を避けてくれているのは、とてもありがたいことだ。(取材・文/白戸京子)
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