クリハラリスを本格捕獲へ「今1万5000頭で何もしないと10年後に10万頭」 浜松市

 特定外来生物という言葉を聞いたことがあると思います。外来種の生物の中でも生態系や農林水産業、そして私たちの命や財産に有害となる生物のことで、全国的にはアライグマ、静岡市ではカミツキガメが有名です。浜松市では、今後とても深刻な問題になりそうな生物がいます。それは「リス」です。


 浜松市民の憩いの場、浜松城公園。この公園で人気を集めているのが「クリハラリス」、通称・タイワンリスです。日本固有種のニホンリスとは異なる外来種です。ニホンリスは体長15センチ・重さ300グラムほどで、腹が白いのが特徴ですが、クリハラリスは一回り大きく体長20センチ以上、重さも360グラムほどあります。エサや生態が似ているため、クリハラリスが増えると体の小さいニホンリスは駆逐されてしまう恐れがあります。
 クリハラリスは生態系や農業、林業に被害を及ぼす恐れがあるとして特定外来生物に指定されています。浜松市役所にも市民から被害の相談が寄せられています。
浜松市環境部 藤田信吾次長:「平成27年ごろから市民の方の問い合わせが入るようになって、30年度は65件の相談があった。例えば住宅の中に入って戸袋をかじられたりとか、家庭菜園のビワとかミカンとかが食べられたりとかいう被害の連絡があった」
 浜松市は去年4月から今年2月にかけて市内の広い範囲でクリハラリスの捕獲調査を行いました。その結果、生息範囲が北部にまで広がりつつあることがわかりました。繁殖力が強く、今後、急激に生息数が増える恐れがあります。
浜松市環境部 藤田信吾次長:「何も対策をしないと毎年1.2倍になっていくだろうと言われています。今1万5000頭ということで、10年後には10万頭を超えるぐらいの頭数になるだろうと言われている」
生息範囲広がれば林業や三ケ日ミカンに深刻な被害も
 生息範囲が北に広がり天竜区に達すれば、ニホンリスが駆逐されるだけでなく、スギやヒノキなど林業に被害が及ぶ恐れがあります。また、北区に広がれば、特産の三ケ日ミカンに深刻な被害が出ることも予想されます。
新年度予算に4780万円計上 初年度は6600頭捕獲が目標
 浜松市は新年度予算案に対策事業費として4780万円を計上しました。本格的にクリハラリスの捕獲事業を始めます。初年度に6600頭、2年目にも6000頭を捕獲し、10年で市内のクリハラリスを根絶する計画です。
ポイントは「餌付け」行為の防止
 捕獲事業が順調に進むのかどうか。森林総合研究所の森澤猛・上席研究員は、重要なポイントを指摘します。
 それは市民による餌付け行為です。森澤さんは去年2月、浜松城公園で、餌付け行為を定点観測し、その結果を専門誌に発表しました。
餌付けで寿命が延び、繁殖力が上がる
森林総合研究所 上席研究員 森澤猛氏:「餌付け行為を行う方の多くは、餌付け自体を目的に訪れていると見受けられました。また、餌付けが始まると20頭を超える多くのリスが集まってきたことから、リスは公園での餌付けを重要な餌資源のひとつと捉えていると考えられました」
 栄養豊富な餌を与えてしまうと、リスの寿命が延び繁殖力が上がると言われています。浜松市も看板を設置するなどして、餌付けをしないよう呼びかけています。
 森澤さんは、論文で餌付け行為をする市民の意識について、「餌付け行為をとがめた者は見当たらなかった」「餌付け行為は禁止されているものの、公園利用者は容認している」と指摘しています。そして、対策を進める行政と、リスに餌を与えようとする市民との間に感情的な対立が生まれるのが心配だとしています。
森林総合研究所 上席研究員 森澤猛氏:「実際感情的な対立が起きてしまいますと、対策事業においては建設的な動きが進まない。これが心配される。これを回避するためには行政と研究サイドには、科学的根拠に基づいた正確で丁寧な説明が求められる」
 浜松市のクリハラリス対策事業は、単なる捕獲事業だけではなく、市民に特定外来生物とは何なのか、どう対処すべきなのかを正しく伝え、理解してもらうという、ハードルの高い事業となりそうです。
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