希少な淡水魚、タナゴ(コイ科タナゴ属タナゴ)が、外来魚のオオクチバス(ブラックバス)を駆除した宮城県栗原市内のため池で確認されたと、伊豆沼・内沼環境保全財団(栗原市)のグループが報告した。外来魚に食べられて絶滅したと考えられていた淡水魚が、駆除後に人の手による放流ではなく「自発的再生」したのはこれまで、大崎市のシナイモツゴなど国内で3例しか報告がないという。【山田研】
同市で15日に開かれた伊豆沼・内沼研究集会で、麻山賢人研究員が発表した。タナゴはかつて、関東以北の本州の太平洋側に広く分布していた。しかし、埋め立て、水質汚濁など環境の悪化に加え、「特に深刻な影響を与えたバスの侵入」(麻山研究員)で減少。主要な生息地だったラムサール条約登録湿地、伊豆沼・内沼では、バスが1970年代から見られるようになり、96年に急増。一方、タナゴは2006年を最後に伊豆沼・内沼で見られなくなった。
タナゴは現在、環境省の「レッドリスト」で絶滅危惧種1B類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高い)とされている。
同財団は04年からバスの成魚や稚魚を網で取るなどの方法で駆除。05年には稚魚だけで516万匹をすくい上げた。また、伊豆沼・内沼に通じる水路の上流側にある、ため池(約1ヘクタール)の水を抜く「池干し」を08年から実施。ため池には釣り人に放されたとみられるバスが生息しており、同年と10年は各約300匹のバスを捕獲した。3回目の12年にバスは確認されなかった。
財団は19年6月、池干しをしたため池とさらに数百メートル上流のため池、両池間の水路で、目視と網ですくう方法でタナゴの生息数を調査。その結果、上流側のため池で175匹、下流側のため池で21匹、水路で7匹を確認した。計203匹のうち成魚1匹以外は体長10ミリ程度の稚魚だった。
財団によると、上流側のため池でバスが確認されたことはない。一方、漁業者が半世紀ほど前まで伊豆沼・内沼で取ったエビと一緒に淡水魚も上流のため池に養殖場代わりに放していたという。二つのため池やその水系でタナゴ再生のための人工的な放流は行われていない。
このため、麻山研究員は「上流側のため池が(タナゴの)保存庫としての役割を果たし、下流側で自発的な再生が行われたとみられる」と結論づけた。さらに、全国各地で外来魚の被害を受けて希少になった魚の再生に「ため池は自発的再生のソースとして期待できる」と指摘。研究会参加者からも「保存庫になっている場所を見つけることが大切だ」との発言があった。
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