コクチバス「長良川も時間の問題」 鮎など在来魚に危機

 北米原産の外来魚「コクチバス」が昨年から今年にかけて、揖斐川の本流と木曽川支流で相次いで確認された。肉食性と高い繁殖力が特徴の特定外来生物で、鮎を含む在来の生態系への深刻な影響が懸念される。木曽三川のうち2河川の本支流に入り込んだことで専門家は「長良川で見つかるのも時間の問題」と指摘しており、岐阜県と地元漁協は年明け早々にも駆除に乗り出す。


 揖斐川で最初に確認されたのは、2018年5月。釣り愛好家グループ「サツキマスレズレクション」の会員が、約30センチの成魚を釣り上げるなど同年中に中流で3匹を捕らえた。「サツキマスで揖斐川を盛り上げようと会を立ち上げた矢先、とんでもないものが掛かった」と同会の北野斉事務局長(58)=大垣市=。
 今年6月から10月まで、会員45人がルアーで捕獲調査をしたところ、117匹が捕まった。うち112匹は20センチ以上の成魚で、40センチ超の大型の個体や、鮎の尾が口から飛び出た状態のものもいたという。「小さい群れを見た会員もいる。次の世代が生まれているのは間違いない」と指摘する。
 漁協関係者の証言や複数の環境調査では、17年以前は見つかっておらず、成魚の多さなどから何者かが放流した可能性がある。恵那市の木曽川支流の阿木川でも今年9月、20〜30センチの成魚など6匹がダム下流で確認されている。
 02年にコクチバスが初めて確認された長野県の千曲(ちくま)川では、15〜16年の県環境保全研究所などの中流域の調査で、個体数の43パーセントを占めるまでに増えた。同県水産試験場の山本聡環境部長は、鮎への影響はカワウの食害もあり不明としながら、「オイカワやウグイを釣りに行っても先にコクチが掛かる。種の置き換えが起きている」と指摘する。
 同川の2漁協は、網と釣りによる捕獲、産卵床の破壊、買い取り制度などで駆除に取り組んでいるが、「国内で流れがあるところの根絶例はない。根気よく駆除を続けるしかない」(山本環境部長)という。
 事態を受け、岐阜県漁連は今年10、11月に漁協関係者を集めた勉強会で対策を周知した。年明けの1〜2月には、淵に集まって越冬する習性を利用して県と地元漁協が揖斐川で初の駆除を実施する。県水産振興室の桑田知宣室長は「一番恐れていたものが川に入ってしまった。個体数を減らすとともに、これ以上の密放流をさせない対策をとりたい」と話す。
 岐阜大地域科学部の向井貴彦准教授(保全生態学)は「コクチはオオクチ以上に魚食性が強く、鮎釣りが難しくなる事態が起きかねない。支流の根尾川から揖斐川にかけて、すでに広い範囲で生息、定着しているとみられ、新たな違法放流がなくとも農業用水などでつながる長良川に入る可能性はある」としている。
 【コクチバス】 サンフィッシュ科の淡水魚で、オオクチバスと共に「ブラックバス」と称される。特定外来生物に指定され飼育や移動、放流が原則禁止されているが、体長30〜50センチの大きさと強い引きで一部の釣り愛好者に人気がある。湖沼や河川中流域に生息し、寒冷地や流水にも適応する。県内では2005年に山県市の伊自良湖で確認されたが、水抜きで根絶に成功。下呂市の岩屋ダム、大野郡白川村と富山県境の境川ダムでは定着している。
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