アユ遡上増、8地点で確認 櫛田川自然再生推進会議 三重・松阪で開催

調査結果報告に意見も「天然と放流、区別し調査を」
 櫛田川の自然再生を目指して、地域住民や有識者、関係団体などが連携して活動することを目的とした「第10回櫛田川自然再生推進会議」(事務局=国土交通省三重河川国道事務所)が17日午後2時から、三重県松阪市川井町の市橋西地区市民センターで行われた。魚道改良後のアユの遡上(そじょう)数のモニタリング調査結果などについて意見が交わされた。

 同会議は2016(平成28)年に設立。学識者・有識者、県、市、町などから約30人が参加して「本年度モニタリング調査結果」「自然再生の今後の進め方」「外来魚(コクチバス)対策に向けた今後の取り組み」などについて話し合った。

 まず本年度のモニタリング調査結果について報告があり、今回は初めて漁協によるアユの放流事業も調査に盛り込まれた。調査は▶魚類生息環境調査(8カ所)▶魚類産卵環境調査(5カ所)──が実施された。

 事務局によると、伊勢湾全体で遡上数は増えており、櫛田川でも全8地点で確認。櫛田第一頭首工(豊原町)下流と櫛田可動堰(ぜき、山添町)下流で、体長8~10センチ程度の個体が多かった。堰上流は体長10センチ以上の大型個体が生息していたが、例年より小ぶり。夏の高水温による渇水傾向で餌が少なかったことが成長の遅れにつながった可能性があるという。

 一方、遡上調査に関して学識者は「天然アユと、放流アユを区別して効果を調べるべき。外見で分かるのできちんとやってほしい」と指摘。担当者は「来年度以降、調査に反映していきたい」と回答した。またアユを放流している多気地域の住民からは「放流の量や位置は遡上数に影響あるのか」という質問も。担当者は、漁協の放流に関する調査は今年度からのため、まだ効果は分からないとしたものの、「毎年調査を重ねていけば知見も蓄積されいく」と放流と合わせた調査を継続していく姿勢を見せた。

コクチバスのリリース 禁止望むも課題多数

 他にも、地域専門部会から、規制などの対象となる「特定外来生物」に指定されているコクチバス(通称・ブラックバス)対策の取り組みについて報告。年々増加傾向で、今年度は、卵を産み付ける産卵床を11カ所で確認、親魚23匹と稚仔魚(ちしぎょ)約8600匹、卵約3500個を回収した。また捕獲した魚の胃の内容物からアユやオイカワなどが確認された。

 同会議では、昨年3月に、「県内水面漁場管理委員会」宛てに、コクチバスなどの外来魚を釣って戻すことを禁じる「リリース禁止」の委員会指示を出してほしいという旨の要望書を提出しており、同委員会での議論結果を報告。外来生物法ではバス類の運搬や放出は禁止されているものの、釣った魚をその場で放す行為は規制されていないため、自治体によっては条例で禁止している。委員の中からも県レベルで条例を設けるべきという意見も出たが、委員会指示を出すにはパブリックコメントなどで意見を求める必要があり▶対象河川の根拠や実際の被害状況などの数字的根拠が不透明▶再放流を禁止した場合の回収ボックスの設置──など、多くの課題があるため、県と情報共有するということにとどまったとした。

 同会議は、要望書の提出と、委員会内での情報共有が果たせたとして、産卵環境調査は本年度で終了し、今後は生息分布調査や胃内容物調査を中心に継続調査していく。

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