和歌山県の里山保全に関心ある有志でつくるグループが、駆除した有害鳥獣の毛を再利用して注目を集めている。中でもユニークなのが、アライグマの毛で作った眉用化粧筆だ。グループの溝部名緒子代表は「毛質が柔らかく最高級品に劣らない品質。通常は廃棄される部分を活用して価値を見いだし、命の重みを考えるきっかけをつくりたい」と話す。
溝部代表は猟師として有害鳥獣の駆除に当たるが、本業はエステティシャンだ。アライグマの毛が最高級の化粧筆に使われるアナグマの毛に似ていることから、加工を着想した。化粧筆の毛はほぼ全量を輸入に依存していることもあり「駆除した動物の毛で、国産の筆を作りたい」と企画した。
実用化に向け、化粧筆を作る全国約30社に相談したが、アライグマの毛のノウハウがなく難航。しかし唯一関心を示した大阪市の企業と出合い、作り方を学んだ。
化粧筆に最適なのは毛質が特に柔らかい1、2歳のアライグマで、1頭当たり化粧筆約30本分取れるという。筆は一般販売されず、同グループが開く講座で1人1500円ほどで製作体験ができる。
これを機に、駆除した動物の毛を筆に加工し絵を描く出前授業を子ども向けに始めた。アライグマの毛は細い絵筆に、硬い毛質のイノシシのたてがみは太いはけに加工し、それらを使って思い思いに描く。溝部代表は「生きている動物に触れることは難しいが、毛の手触りなどを体感することで野生鳥獣に関心を寄せてほしい」と願う。