鹿児島県・奄美大島のみに分布し絶滅危惧種となっているリュウキュウアユの生息数は、海水温の上昇の影響を大きく受けることが、奄美リュウキュウアユ保全研究会の調査で明らかになった。前の冬が暖冬だった2024年11月の生息数は前年の約3割の4389匹に激減しており、同研究会は「今後も温暖化が進めば絶滅する可能性が極めて高くなる」としている。詳細は近く論文で発表する。
リュウキュウアユは奄美大島の固有種。以前は沖縄本島にも生息していたが、河川改修などにより1970年代に絶滅した。環境省レッドリストでは絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧ⅠA類に分類されている。寿命は多くが1年で、稚魚時は河口近くの汽水域に生息。その後に川を上り、晩秋から冬に下流で産卵する。
同研究会は毎年5月と11月に、役勝川や住用川の3河川を中心に生息数を調査。2012年以降で11月に最も多かったのは15年の8万1527匹だった。15年以降は稚魚生息域近くの住用湾で冬場の水温も調べており、高くなるほど生息数が減る傾向を確認した。リュウキュウアユは冷たい水温を好み、水温の上昇によって稚魚の生存率が大きく低下しているためとみられる。
研究会メンバーで現地調査する鹿児島大学水産学部の久米元准教授(50)は、「コケを食べるリュウキュウアユが絶滅すると、川の景観や生態系への影響も懸念される」と指摘。「今後も生息数の推移を注視していく。地球の温暖化は魚類にも影響があることを多くの人に知ってもらいたい」と話している。