浜名湖の特産品として知られるアサリの2024年漁獲量が、前年の1%未満の180・4キロと壊滅的だったことが17日、浜名漁協への取材で分かった。アサリに有害な赤潮と長雨などが原因とみられ、現在も回復の見通しは立っていない。
浜名湖では23年秋ごろ、有害な赤潮「ヘテロカプサ・サーキュラーリスカーマ」が増加したことが確認された。静岡県水産・海洋技術研究所浜名湖分場によると、23年9月下旬から10月初旬ごろまでの水温観測で、表層水と底層水の水温差がほぼなくなり混ざり合う「湖水の鉛直混合」が発生。底層水の栄養塩(窒素やリンなど)が表層へ浮上したことでプランクトンが増殖して大量のアサリが死滅したと推測されるという。
長雨による悪影響も重なった。24年8月下旬ごろに1週間以上の雨が続き、淡水のように湖内の塩分濃度が低下して、アサリにとって致命的な状態となったとされる。ここ数年はクロダイによる食害も広がっていた。
同漁協によると、23年の漁獲量は362・7トン。浜名湖アサリは不漁が続いていて09年に6007トンを誇った漁獲量は21年に100トンまで減少したが、1トンに満たなかった例はないという。
渥美敏組合長(71)は「24年はアサリ一粒を見つけるのも難しい状態で、春先からは禁漁にするまでもなく、漁に出る人がいなくなった」と話す。
同漁協の採貝組合連合会員にはアサリの漁師など現在343人が所属する。約30年間、浜名湖でノリとシラス、アサリ漁をしている浜松市中央区の漁師(63)は「昔はアサリだけで(年収)1千万円以上稼げたが、最近はアサリだけの人は生活できず、カキや、畑に行ってタマネギ農家などのアルバイトを掛け持ちしてしのいでいる」と語った。