猪苗代湖に「厄介ザリガニ」 調査8年、福島・会津美里の親子が初確認

 特定外来生物のウチダザリガニの生息状況を、福島県会津美里町の高校生と母親が調べている。昨年には猪苗代湖岸で確認し、専門家が集まる学会でポスター発表した。猪苗代湖岸での確認は初めてとみられ、生態系に及ぼす影響などから、親子は今後の広がりを懸念している。

 「とても残念な気持ちだった」。会津美里町在住で尚志高通信制会津若松駅前キャンパス2年の石山七海さん(17)と母美和さん(46)は猪苗代湖岸でウチダザリガニを発見した時の心境を振り返る。ウチダザリガニが猪苗代湖に定着すれば、生態系に影響を及ぼしかねない。不安な気持ちにもなる。

 七海さんは小学1年生の頃、ザリガニに興味を持つようになった。その後、北塩原村などの裏磐梯に生息するウチダザリガニが長瀬川を通じて猪苗代湖に侵入しているのではないかと思うようになり、2016年頃から美和さんや姉杏好(あずき)さん(18)とともに調査を続けた。

 調査開始から8年近くたった昨年7月、天神浜に近い猪苗代湖岸で2匹のウチダザリガニらしき個体を発見。ザリガニの研究者や昆虫を専門に研究する福島大共生システム理工学類の塘(つつみ)忠顕教授などに連絡し、ウチダザリガニであることが判明した。

 七海さんらは調査結果をまとめ、昨年10月に都内で開かれた甲殻類学会でポスター発表した。「発表を通して多くの人に現状を知ってもらうことが大切だと思う」と七海さんは話す。

 ウチダザリガニは雑食性で、水生生物や水草などを食べる。県内ではこれまで、二本松市や喜多方市、西郷村などで確認されているが、塘教授によると、猪苗代湖岸で確認されたのは初めてという。

 県によると、猪苗代湖に定着している特定外来生物はコクチバスのみ。ウチダザリガニが定着しているかは調査が必要になる。

 「生き物が好き」という石山さん親子。「今ある生態系が崩れることも、ウチダザリガニが増えて駆除されることも心苦しい。自分たちに今できることを続けていきたい」。生態系を守るため、これからも調査や研究を続けていく。(中島和哉)

福島大・塘教授「放置すれば影響大きい」

 今回の調査結果について塘教授は「ウチダザリガニが侵入し個体数が増えれば、猪苗代湖内の生態系や生物多様性にさまざまな負の影響を及ぼす可能性が高く、深刻な状況になる。2匹だけであっても、侵入を確認した意義は大きい」と指摘する。

 塘教授によると、ウチダザリガニは県内では1998年に北塩原村で初めて確認され、各地に広がった。堀川ダム(西郷村)湖内では、ほぼ絶滅状態になった水生昆虫もいるという。それだけに、塘教授は「確認された水路でのウチダザリガニの生息を放置すれば、これからも、どんどん湖内へと侵入してしまう可能性がある」と話し、対策の必要性を訴える。

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 ウチダザリガニ 北米大陸のカナダ南西部や米国北西部に分布。最大体長は15センチ前後ではさみの付け根に青白色の大きな模様がある。1926~30年頃に国内に持ち込まれ、北海道や福島、滋賀県などに分布している。雑食性で水生生物や水草などを食べ、攻撃性もある。

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