奄美大島北部を中心に植樹されているソテツは新芽の時期を迎えているが、被害葉切除後の幹から新芽・新葉が出ているものでも外来カイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)=和名・ソテツシロカイガラムシ=の付着が確認されている。周辺では新芽を食害するチョウ・クロマダラソテツシジミの成虫も飛来しており、関係機関は「春の新芽時期から薬剤を繰り返し散布」を呼び掛けている。
CASはソテツの幹や葉に寄生し、吸汁する害虫。増殖力が高く、被害木が枯死することもある。国内では奄美大島(奄美市や龍郷町の北部を中心に全域で確認)や沖縄県の一部地域で確認されている。
ソテツを守るため、「春からの繰り返し薬剤散布が大切」を指摘しホームページなどで周知を図っているのが県森林技術総合センター。登録薬剤のマツグリーン液剤2を用いた防除スケジュールのほか、防除のポイントとして▽新芽や柔らかい新葉に幼虫が群がる▽白い介殻(かいかく)や蛹(さなぎ)殻がなくても、幼虫が潜んでいる▽葉表にカイガラムシがいなくても葉の付け根や葉裏に注意▽幹の凹凸の隙間や綿状部分にも潜んでいる▽ノズルの先を綿状部分に接するように近づけ、綿状部分に染みこませる―など挙げており、「繰り返し散布・被害葉の切除は必須」「カイガラムシの付着を放っておけば、一気に増殖し葉枯れが急速に進行」として根気強い対策を求めている。
奄美大島や沖縄島で被害状況の確認とともに域外保全へ種子など採取のフィールドワークに取り組んだ一般社団法人日本ソテツ研究会の髙梨裕行会長は「奄美大島北部では連続してソテツが植樹されており、そのためCAS被害の拡大スピードがとても速い。沖縄の方は点在しているため、被害で枯れている群生地があっても、次の群生地と距離が離れていることから奄美と比べ拡大のスピードが遅いのではないか」と両地域の違いを説明。奄美大島での防除について「被害葉を切除しても幹に残り、確実に越冬している。(県の機関が周知を図っているように)薬剤をまかない限り、感染のターゲットになってしまう。新芽・新葉が出たからと油断せず、早期発見と繰り返しの薬剤散布を。クロマダラソテツシジミも同時期に二つの被害につながることから、造園業者の取り組みを参考に駆除を」と指摘する。こうした対策を施さない場合、「新芽が出ても感染により半年で枯れてしまう。公有地・民有地を含めて対策の徹底と同時に、打田原(うったばる)やあやまる岬、安木屋場(あんきゃば)などの群生地は積極的に残す取り組みが必要ではないか」と提案する。